200件以上の相続事件に携わってきた筆者が、実際の事件をオリジナルストーリー化して紹介する本連載。ここでは、遺言書の有効性を巡り兄妹が争った事例を解説します。本事件の相続人たちが迎えた結末とは…? ※本連載は、武蔵野経営法律事務所代表・加藤剛毅氏の著書『トラブル事案にまなぶ「泥沼」相続争い 解決・予防の手引』(中央経済社)より一部を抜粋・再編集したものです。

遺言書は「メモ書き程度」でも有効になるが、争いの元

本文の事案では、何とか控訴審で逆転勝訴することができましたが、本件で見つかった日記はもともと、皆様が想像するようなきちんとした遺言書の形式をとったものではなく、メモ書き程度のものでした。皆様は、このような日記のメモ書き程度の記載でも遺言として認められることがあるということに驚かれたかもしれません。

 

しかし自筆遺言は、財産目録以外の本文を自書し、日付や氏名を自書し、押印(認め印で可)をするという要件さえ満たせば有効となります。

 

このため、いわゆる「遺書」や市販されている「エンディングノート」、本文のような日記のメモ書きでも民法の要件さえ満たせば「遺言」として有効とされる可能性はあるのです。

 

とはいえ、自筆の遺言書は偽造の可能性などもあり後日有効か無効かをめぐって深刻な争いになるおそれがありますので、私は紛争のおそれをできる限り少なくするため遺言書については自筆証書遺言ではなく、公正証書遺言を作成しておくことをお勧めしています。

 

 

加藤 剛毅

武蔵野経営法律事務所 代表

弁護士、元さいたま家庭裁判所家事調停官

 

 

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トラブル事案にまなぶ 「泥沼」相続争い 解決・予防の手引

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加藤 剛毅

中央経済社

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