老人ホームが「個別支援」で学習塾化している?
老人ホームへの入居を検討している家族が、自分と同じ思いで自分の親の面倒を見てほしいと真剣に考えているのであれば、より高額な高級老人ホームに親を入居させることが賢明であることになります。しかし残念ですが、世の中にある多くの事象は、「安かろう悪かろう」ということだと思います。
例外的に救いがあるのは、富裕層の中にも、必ずしも高級品や高級なサービスを好まない人が一定数存在していることと、素晴らしい能力を持っている社員が、低価格帯のホームにも一定数は存在しているという事実です。しかし、これはレアなケースであり、ほとんどはやはり、「金次第」ということだと理解したほうがよいと思います。
学校を考えてみてください。一クラスに30人の生徒がいます。親にとっては、自分の子供は唯一無二の存在ですが、先生にとってはどの子も30人の中の一人です。当然、能力の高い先生は、一人ひとりの子供の特性や性質を把握し、その子供に合った教え方をすると思いますが、集団指導ですから限界はあります。
そうした中で子供の学力を伸ばす役割を担っているのは、学校が終わった後に通う学習塾ではないでしょうか。塾の生徒募集のチラシを見ると「個別指導」「少人数制」などという活字が躍っています。個別指導だから自分の学力に合った指導が可能、少人数制だから丁寧な指導が可能、ということによって子供たちの学力も伸ばすことができるという理屈だと理解しています。
老人ホームもこれと同じです。最近の老人ホームの募集チラシでよく見るキーワードに「個別対応」「個別支援」などというものがあります。「個別」「個別」「個別」とあたかも「個別」が一番よい方法であるという思想がはびこっています。
小嶋 勝利
株式会社ASFON TRUST NETWORK 常務取締役
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