「毎日、激務を漫然とこなすだけ」
医療の現場は、勤務医・開業医を問わず多忙です。とにかく効率よく業務をこなすことを最優先する必要があります。このため、立ち止まって熟考している余裕などありません。時間がないため、かなり意識しないと新しい知見を習得することは難しいです。場当たり的に、日々の業務をこなしているだけの状況に陥りがちです。疲れて帰宅するので、プライベートのことを考える余裕もなくなります。
このような状況が1年以上続くと、考えることを放棄した人間になってしまう危険性が高まります。この状況は、ブラック企業が労働者を過酷な環境に置くことで、思考力を奪うことに似ています。
医師の場合、一般のサラリーマンよりも時給単価が高いです。このため、考えることを放棄してしも問題が表面化しにくいことが、大きな問題点だと思います。
特に30歳台の中堅勤務医は、激務のために考えることを放棄してしまう問題をもっと直視するべきだと思います。卒後5年未満の時期は、医師としての修練を積むべきです。
とにかく馬車馬のように働くことも是だと思います。しかし、この時期を過ぎた中堅医師が、漫然と日々の業務をこなすだけの状態は思考停止と同義であり、望ましい状況とは言い難いです。
そして、このことは開業医にも当てはまると思います。事業の新規展開を見据えて、トライ&エラーしている状況は理想的です。激務もやむを得ないでしょう。しかし、山のように押し寄せる患者さんの診療を、単に黙々とこなしているだけの状況はいただけません。これでは、零細企業の社長や自営業者と変わらないと思います。彼らとの違いは、参入障壁に守られた利益率の高さと、国民皆保険制度による資金回収の確実さのみです。
安泰の医師人生には「自分を見つめ直す時間」が必要
いずれの場合も、激務は人から思考能力を奪いがちです。このため、相当意識していないと、思考停止したダメな人間になってしまいます。思考停止して激務をこなすことは、決して美徳ではありません。医師は、業務の時給単価の高さと社会的地位の高さのために現状肯定の意識が強いです。その一方で、一般の方よりも思考停止に陥っている人の比率が高い印象を受けます。しかし、現状が未来永劫にわたって続く保証はありません。
●国際情勢は変化しない
●社会情勢は変化しない
●通貨価値は下落しない
これらの前提条件が、今後10年以内に崩れない可能性はかなり低いと思います。前提条件が崩れると、準公務員である医師は経済的に厳しい状況に追い込まれます。仮にこのような状況が発生しても対応できる状態が理想的です。このためには、自分の医療技術と経済的耐久力を高める必要があります。そして、来るべき社会の変化に備えるべきでしょう。
現在の日本の医療制度では、医師がすべての医療行為の起点となっています。このため、医師に業務が集中することは、ある程度仕方のないことです。このような事情を理解しつつも、1日1回は自分を見つめ直す時間を確保したいものです。そして、自分を見つめ直す時間は、30分程度でも問題ないです。経済的に自由な状況に到達するためには、自分で状況を分析して、現状を改善する手立てを考えるしか方法がありません。考えることは最も外注しにくい分野です。自分の人生に関わることは、自分で考えて解決しなければいけません。
現状の医師は、知的労働者というよりもブラック企業で過酷な環境に置かれている労働者に近い存在です。このことは、肝に銘じておく必要があります。激務に身をまかせることは美徳ではありません。経済的に自由な状況に到達するためには、オーバーワークにならないよう心掛けるべきだと思います。
<POINT>
オーバーワークによる思考停止は命取り
1日1回30分は自分を見つめ直す時間を持とう