「勤務医か開業医か」の二者択一に縛られない選択肢
医師のキャリアパスを経済面から考えてみます。医師のキャリアパスは、大きく2つに分けられます。勤務医のまま医師人生を終えるパターンと、途中でクリニックを開業するパターンです。便宜上、大学教員や研究者は、勤務医に含めています。ここでは勤務医と開業医に加えて、私が推奨する第3のキャリアパスを加えました。
第3のキャリアパスは、基本的に勤務医です。勤務医を続けるかたわら、不動産経営・金融資産投資・スモールビジネスを実践します。そして、それらからの収益を再投資することで、経済的に自由な状況へ到達するというキャリアパスです。
目的は、医師として働かなくても生活していけるだけの収入を得る仕組みを構築することです。仮に、このキャリアパスを「医師+投資」と呼ぶことにします。不動産経営・金融資産投資・スモールビジネスからの収入が安定すると、医師としての選択肢の幅が広がります。例えば、海外留学などのチャンスをつかんだ際には、経済的な憂いなく留学することが可能です。
長い医師生活の間には、勤務している医療機関の環境が悪化したり、意にそぐわない勤務を強制されこともあるかもしれません。そのような場合でも、経済的に自由な状況へ到達していると、自分の信念を曲げる必要はありません。医師人生を有意義に過ごす上では、理想的な状況と言っても過言ではないと思います。
加齢に伴い「経済的に成功する確率」が変化
次の図表は、医師の年齢と経済的成功の可能性をイメージしたものです。
年齢が若ければ若いほど、3つのキャリアパスのどれもが選択可能です。そして、年齢的には35歳、45歳、50歳が、キャリアパスを選択する上でのひとつの目安になると思います。経済的に成功しようと思うのであれば、開業するか否かのひとつの区切りの年齢は35歳です。この理由は、「医師+投資」の第3のキャリアパスを選択する場合には、時間を味方につける必要があるからです。
投資成果を得て複数の収入源を構築するためには、ある程度の時間がかかります。私の場合、医業以外の収入が医師の給与所得を上回るのに要した期間は約10年でした。一般的に、24〜26歳から医師人生がスタートします。このため、医師免許取得後すぐに第3のキャリアパスを選択したとしても、経済的に自由な状況へ到達するのは35歳前後になることが予想されます。
では、35歳から第3のキャリアパスを選択した場合はどのようになるでしょうか。この年代になると、教育費や住宅ローンなどの負担が増えてきます。このため、経済的自由な状況へ到達するのは、50歳前後になる可能性が高いです。このため、35歳以降では開業する方が、経済的に成功する可能性が高くなります。
そして、開業するのであれば、45歳ぐらいが最終ラインだと考えています。50歳以降では、初期投資を回収できない可能性が高まります。したがって、この年代からの開業は、あまりお勧めできません。勤務医として医師人生を終えることを推奨します。
何を選択しても「マネーリテラシーの向上」が重要
ここまで述べた内容は、あくまで経済的成功を尺度にした医師のキャリアパスです。経済的要素はもちろん重要です。しかし、医師人生における最優先事項ではないと思います。このため、35歳以降は開業医、45歳以降は勤務医といった紋切型なキャリアパスを推奨しているわけではありません。
そして、私が推奨している第3のキャリアパスは、35歳以降で選択する余地がなくなるわけではありません。第3のキャリアパスの目的は、医師として働かなくても生活できる収入を得る仕組みを構築することです。このような状況へ確実に到達するためには、35歳までに開始することが望ましいです。
スタートが遅ければ不利なことも事実ですし、最終的に到達できない可能性もあります。しかし、経済的に自由な状況まで到達できなくても、何の対策も立てずに漫然と生活しているよりは確実に経済的な安定性が高まります。
ここで挙げているのは、あくまで医師のキャリアパスの一例です。キャリアパスに関わらず、マネーリテラシー※を高めて投資的な考え方も生活に取り入れるべきだと思います。この点に関しては、勤務医や開業医の違いはありません。
※ お金を増やす知識や管理する能力。
前項でも指摘したように、収入源の複数化は経済的な安定には必須です。仮に開業して大成功をおさめた場合であっても、社会情勢の変化で苦境に陥る可能性は十分にあり得ます。このため、自分が選択したキャリアパスに関わらず、マネーリテラシーを高める必要があると思います。
<POINT>
第3のキャリアパス(医師+投資)を選択するなら、35歳までにスタートすることが理想的
自由気ままな整形外科医
医学博士、日本整形外科学会専門医、日本リウマチ学会専門医
2025年2月8日(土)開催!1日限りのリアルイベント
「THE GOLD ONLINE フェス 2025 @東京国際フォーラム」
来場登録受付中>>
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■月22万円もらえるはずが…65歳・元会社員夫婦「年金ルール」知らず、想定外の年金減額「何かの間違いでは?」
■「もはや無法地帯」2億円・港区の超高級タワマンで起きている異変…世帯年収2000万円の男性が〈豊洲タワマンからの転居〉を大後悔するワケ
■「NISAで1,300万円消えた…。」銀行員のアドバイスで、退職金運用を始めた“年金25万円の60代夫婦”…年金に上乗せでゆとりの老後のはずが、一転、破産危機【FPが解説】
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】