「自分の時間を使って働く」という稼ぎ方の限界
世の中には「仕事=自分の時間を使って働く」という考えの方が多いと思います。医師は、一般企業に勤める人と比べて時給単価が高いです。このため、自分の時間を使って働くという考え方が顕著です。このことは他人に雇われている勤務医に限らず、開業医にも当てはまります。開業医は、自分が投入した時間や労働力に比例して収入が上がります。このため、仕事とは自分の時間を使って働くことという考え方になるのも仕方がありません。
もちろん社会的に考えても、自分の持つ能力を世の中に還元することは望ましいことです。しかし、「仕事=自分の時間を使って働く」という考え方には大きな落とし穴があります。その大きな落とし穴とは、自分の時間を使って働いている限り、いつの日にかリタイアする日がやって来ることです。
リタイア後に待ち受ける「危険な生活」
なぜ、普通にリタイアすることが問題になるのでしょうか? お金を稼ぐことが、経済的には最大の攻撃であることは論を待ちません。それに加えて、人生において自分や家族の身に大きなトラブルが発生した場合に、お金を稼ぐことは最大の防御にもなるからです。
現役時代に身を粉にして働くことで、一生食べていけるほどの多額の貯蓄を残すことに成功したとします。それであっても、リタイアして無収入になることは危険な行為です。例え1億円の現金が銀行口座にあったとしても、減る一方の通帳を見ることは精神的に辛いものです。自力で稼いだお金ではなく、親から引き継いだ資産の場合は、更に恐怖感が高まります。
このように言うと、銀行口座に現金を貯めるのではなく、不動産投資や株式投資によって不労所得を得ることが解決法になると考える人もいます。しかし、残念ながらこの方法でも、問題を完全に解決することはできません。その理由は、働かずにお金を殖やそうとすると精神的余裕がなくなってしまうからです。
精神的な余裕がなくなると、不動産投資や株式投資がうまくいかなくなる危険性が高まります。私は、たとえ十分な貯金があっても無収入になることは避けるべきだと考えます。
ちなみに中堅以下の若手医師が、将来の年金収入をあてにした人生設計を立てることは控えるべきでしょう。少子高齢化の流れは既定路線です。年金の財源は、現役世代から徴収する収入です。これから現役世代の人口はどんどん少なくなっていきます。少なくなっていく現役世代に、自分の老後を託することは危険な行為だと思います。
一方、「70歳ぐらいまで働きたい」や「開業すると定年退職がなくなることがメリット」ということを耳にします。しかし、この考え方には、いつの日にかリタイアする日がやって来るという事実が抜け落ちています。
現役医師のうちに「リタイア後も使える収入源」を獲得
それでは、私たちは一体どうすればよいのでしょうか? 先ほど否定しましたが、安定的な収入を得ることができる手段は、やはり不動産だと思います。ただし、不動産「投資」ではなく、不動産「経営」をすることが必要です。
ここで言う経営とは、自分の時間を投入して清掃・修繕・客付業務を行うという意味ではありません。私が考えていることは、経営者の視点で不動産を運用することです。不動産の運営を、完全に他人に任せてしまってはいけません。
自分の力でコントロールする能力を身に着けることが、問題解決につながると思うのです。ここでは、一般的に最も参入のハードルが低いため不動産経営を例示しました。しかし、スモールビジネスを立ち上げることも、魅力的な選択肢のひとつだと思います。特に、医師の参入障壁を上手く利用できるスモールビジネスを構築できれば最高だと思います。自分の力で収益構造を100%コントロールする能力を習得する。そして、医師をリタイアした後も継続的に収入を得る手段を複数獲得することが重要なのです。
継続的に収入を得る手段を複数持つことは、経済的自由を獲得するためには必須です。経済的に自由な状態になることで、自分の意に反して働き続ける必要性から解放されます。このことは思考や選択の自由を獲得することにもつながります。そして、自分が理想とする医療を実践することも可能となるのです。
<POINT>
経済的自由の獲得には、自分の力でコントロールする能力を身に着けることが必要