コロナ禍…デリバリーに挑戦するも赤字は続く
そんななか、佐藤さんにもコロナ禍が襲いかかります。
すぐさま感染防止協力金、持続化給付金の申請をしつつ、政府系金融機関から1,000万円の新型コロナの特別融資を受けました。これで数ヵ月の資金繰りは問題ありません。しかし営業を再開しても、お客さんが一向に戻ってきません。家賃、人件費を考えると完全に赤字です。
売上を戻すために外部のデリバリーサービスも始めました。35%の手数料を支払う必要がありますが、35%をそのまま値上げするわけにもいかず、15%分は値上げし、残り20%は店側の負担にしています。デリバリーは粗利率も下がりますし、そもそも大した売上にならず、赤字のままです。
とうとう資金ショートが迫ってきました。「このまま、自己破産する他ないのか、夢を追いかけることを応援してくれた家族の大事な家も失ってしまうのか」
佐藤さんは、自己破産を経験した知人がおり、ある程度の予備知識がありました。
・自己破産をすると通常は最終的に借り入れが免責(返済不要)になる。
・自己破産時には99万円以下の資産しか持てず、住宅も売却させられ債務の弁済に充当される。
・いわゆるブラックリストに載ることになり、何年もクレジットカードが使えず、新たな借り入れもできない。
・破産手続きには費用が掛かる
そんな時、佐藤さんは【個人再生における住宅資金特別条項(住宅ローン特則)】という制度を見つけます。
・債務を圧縮でき、それを原則3年間で返済すればよい。
・個人版民事再生の特別条項が適用されれば、住宅を手放さずにすむ
・破産と同じくブラックリストに載る。新規借り入れ、クレジットカードも同様。
・破産と同じく費用が掛かる
佐藤さんは、債務を圧縮でき、さらに住宅を手放さずに済むことに魅力を感じながらも、そもそも個人再生手続きに使える資金が手元にありませんし、さらにブラックリストに載り新たな借り入れできないことに釈然としません。「昨年までは順調に経営できていた。新型コロナが原因でひっ迫したのは間違いないのに、経営責任を取るのは腑に落ちない」……そんな気持ちでした。
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■月22万円もらえるはずが…65歳・元会社員夫婦「年金ルール」知らず、想定外の年金減額「何かの間違いでは?」
■「もはや無法地帯」2億円・港区の超高級タワマンで起きている異変…世帯年収2000万円の男性が〈豊洲タワマンからの転居〉を大後悔するワケ
■「NISAで1,300万円消えた…。」銀行員のアドバイスで、退職金運用を始めた“年金25万円の60代夫婦”…年金に上乗せでゆとりの老後のはずが、一転、破産危機【FPが解説】
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】