2020年、新型コロナウイルスの感染拡大により、多くの中小企業が苦境にあえいでいます。特に金融機関から借入金の返済条件変更(リスケジュール)を受けた企業が、資金繰りが追いつかずに倒産する事例が目立っています。本連載では、企業再生のスペシャリストである坂本利秋氏が、中小企業が経営難を乗り切る方法を解説していきます。今回は「融資」について焦点をあてていきます。

コロナで経営ピンチ!固定費3ヵ月分の融資に成功…

鈴木健一(仮名)さんは、東京都内で雑貨店を経営しています。

オリジナルのグッズが人気で順調に業績を伸ばしていたところで、新型コロナウイルスがやってきます。2月の業績は例年通りで一安心でしたが、3月は売上高が急減し前年同月比で50%を下回ってしまいました。

3月の業績と日々ヒートアップするコロナのニュースを見て不安になり、4月の上旬に日本政策金融公庫を訪れ、新型コロナの特別貸し付けを申し込むことに。

「新型コロナの影響で来店客数が激減し、売上高が前年同月比で50%を下回ってしまいました。この状況が続くかもしれませんので、融資をお願いいたします」

「そうですか、大変ですね。小売業なので新型コロナと売上減少の因果関係は明らかですね。早速ですが、この必要書類を添えて借入申込をしてください。融資金額ですが、固定費の3ヵ月分程度で検討することになりそうです」

「ありがとうございます。固定費というと賃料と人件費の3ヵ月分ですね。融資頂ければ、すごく助かります」

申請より1ヵ月ほどして、固定費の3ヵ月分の融資が無事実行されました。
 
3ヵ月の融資を…(※画像はイメージです/PIXTA)
3ヵ月の融資を…(※画像はイメージです/PIXTA)

 

おそらく中小企業経営者の多くが、似たような経験をしたものと思います。ここで重大な機会ロスが発生しています。

 

新型コロナの特別貸し付けの制度開始は3月半ばで、当時は東京オリンピックの2020年開催の可能性をわずかに残していました。固定費の6ヵ月分の融資では、新型コロナの影響が9月末までは残ると宣言しているようなものです。それが原因かは不明ですが、融資額は固定費の3ヵ月分で運用していたようです。

 

筆者は、中小企業の再生支援を行っておりますが、ある会社は固定費の3ヵ月分の4倍近い融資を実現しています。どのようなカラクリがあるのでしょうか。

 

・半年先の受注がキャンセルになった事実を見せ、すでに6ヵ月分の影響を受けている。

・本来変動費である外注費も、当社の競争力の源泉は優秀な外注にあり、ここへの発注ストップはすなわち当社の経営継続が不可となることを意味する。つまり外注費も実質的に固定費である。

 

鈴木さんの会社と、筆者の顧問先の違いは、上のような説明が有効であることを知っているか、知らないかの違いだけです。

 

コロナ禍では、ほとんどの中小企業が政府の支援策を利用していますが、徹底的に使いきっている会社はごくわずかに見えます。このわずかな差が、数ヵ月の資金繰りの差につながり、企業の生死を左右します。

 

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