2020年、新型コロナウイルスの感染拡大により、多くの中小企業が苦境にあえいでいます。そんななか金融機関からの融資に頼る中小企業が多いことでしょう。そこで問題となるのが連帯保証。これまでは経営者自身が連帯保証人となるケースが一般的でしたが、それが原因で後継者問題に悩み、廃業に追い込まれるケースが後を絶ちません。創業40年を迎える高橋土木の例をもとに、事業承継における連帯保証の問題を考えていきましょう。※本連載では、企業再生のスペシャリストである坂本利秋氏が、中小企業が経営難を乗り切る方法を解説していきます。

「経営者自身が連帯保証人に」は過去の話

【STORY】

高橋博(仮名)70歳は、基礎工事を主とする土木会社を経営している。10年の経験を積んだのち、3人の仲間と会社を立ち上げたのは40年前である。

すぐにバブル期が到来し社員は一気に20名まで増えた。バブル崩壊から建設不況となったが、丁寧な工事と工期遵守が評価され仕事は堅調であった。建設不況が終わると、社員の高齢化と職人不足に悩まされたが、毎年1名ずつ採用した新卒社員が辞めずにいてくれること、長男が10年前に入社してくれたこともあり、この危機も乗り越えることができた。

長男はIT会社出身でありシステムに詳しい。土木系のCAD、業界特化の原価管理システム、会計システムの連携もおこなったことから、管理が強化された。昔はどんぶり勘定で良かったけれど、価格にシビアになった現在では、必然の進化なのだろう。あまり褒められた話ではないが、創業当初は個人と会社のお金の分類ができていなかったが、今はシステムも導入され、税理士の指導もありしっかりやっているほうであろう。

そう考えていたある日、古いショベルカーが壊れた。修理を繰り返し、だましだまし使っていたものの、とうとう限界が来たようである。修理パーツはもうないし、そもそも500万円の修理見積では話にならない。新車のショベルカーを買うべく、政策公庫に2,000万円融資を申し込んだ。

土木工事の工期への影響を考えてくれたのだろう、2週間で決裁が下りた。会社の応接室で、借入契約書にはんこを押す。この40年間で何回押しただろうか、慣れたものである。もちろん、連帯保証人欄にも個人のはんこを押す。

よし、頑張って2,000万円を回収するぞ。
 
頼もしい長男のいる…(※画像はイメージです/PIXTA)
頼もしい長男のいる…(※画像はイメージです/PIXTA)

 

土木工事会社ではよく見られる光景ですが、筆者にはこのシーンに違和感があります。

 

それは、社長による連帯保証です。

 

確かに以前は中小企業の借入では、代表取締役の連帯保証が当たり前でした。しかし、現在は、これは当たり前の行為ではありません。

 

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