10年以上税金滞納、親族複数世帯が居住……
家主業を始めて4年ほどで4棟の賃貸住宅を所有していた田中さんは、任意売却物件を取り扱う不動産会社から千葉県の駅徒歩6分、中古RC造マンションで利回り17%という好条件物件を紹介された。任意売却物件だったため、表に出ていない物件情報だった。興奮した田中さんは「これは買うしかない」と思い、即決で購入した。
ところが、この高利回りにはワケがあった。売主は税金を10年以上滞納、その上、そのマンションは売主の親族複数世帯が住んでいて、いずれも何かしら問題を抱えている人たちだった。
田中さんが購入したことによって、3家族が退去したが、退去した後の部屋はかなりひどい状態だった。風呂が壊れて使えない部屋があったり、水漏れを起こした形跡が残る部屋があったり。
そのため、建物の問題を解決すべく、ホームインスペクション(建物調査)を行ったが、担当者から、建物がかなり傷んでいてコンクリートの落下の危険があることや、お金をかけてこなかった売主がDIYでごまかしながら対処してきたため、ベランダをはじめ危険な箇所が多いとの指摘を受けて唖然としたという。
外壁修繕と鉄部の補修、防水の補修で800万円ほどの費用がかかった上、水道管も老朽化していたため、配管の再生工事を実施し、合計1200万円もの修繕費がかかってしまったのだ。
さらに、すぐに残った親族の家賃滞納も始まったため、保証人に連絡し管理会社の担当者と対応したが、結局、この任意売却物件の運営が落ち着くまでに2年を要したという。
田中さんにとって、これまでの賃貸経営の中で最大の出費とピンチだったが、ピンチを乗り越えればチャンスあり。今となっては問題もなく満室を維持して、稼ぎ頭の物件になっているという。
「任意売却物件にはリスクもあるが、問題を乗り越えられればおいしい果実も待っていると思います。ただ、果実として食べられない場合もあるので、注意が必要です」と田中さんは話す。
以上のように、価格が安い不動産には必ず理由がある。その理由を十分に調べ、理解した上で購入を検討する必要がある。単に安いからといって安易に買ってしまうと、後でトラブルが発生する可能性もあるので、ビギナーは特に注意が必要だ。
永井ゆかり
「家主と地主」編集長
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■月22万円もらえるはずが…65歳・元会社員夫婦「年金ルール」知らず、想定外の年金減額「何かの間違いでは?」
■「もはや無法地帯」2億円・港区の超高級タワマンで起きている異変…世帯年収2000万円の男性が〈豊洲タワマンからの転居〉を大後悔するワケ
■「NISAで1,300万円消えた…。」銀行員のアドバイスで、退職金運用を始めた“年金25万円の60代夫婦”…年金に上乗せでゆとりの老後のはずが、一転、破産危機【FPが解説】
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】