どうやって老人ホームを選んだらいいのか? それには入居者の生の声を聞くのが一番と、国内最大の老人ホーム紹介センターを経営する著者は断言します。そこで著者は、数々の入居者のエピソードを通して、ホームでの暮らしの悲喜こもごもを紹介。現在、国内最大の老人ホーム紹介センターを経営する著者が、実は知らない老人ホームの真実を明らかにします。本連載は小嶋勝利著『老人ホーム リアルな暮らし』(祥伝社新書)の抜粋原稿です。

全体最適から逆算した部分最適の食事の時間

つまり、老人ホームでのレクリエーションは、介護職員にとっては、修業か罰ゲームになってしまいます。

 

入居者側に立った場合、認知症入居者はさておき、自立組の入居者はどう考えているのでしょうか? 実は自立組の入居者の多くは、「こんな馬鹿馬鹿しい幼稚園生のようなことはしていられない」と考えています。つまり、もっと、レベルの高い内容のレクリエーションを求めているのです。レクリエーションの専門家によると、いつまでも、体育、図画工作、音楽の3つをしているのではなく、国語、算数、理科、社会といったレクリエーションを考えて提供しなければならないと、指摘を受けます。しかし、現実的には、老人ホームのレクリエーションは、いまだに体育、図画工作、音楽が主流なのです。

 

18時からは、夕食が始まります

 

多くのホームでは、18時前後から夕食の時間になります。

 

ちなみに、私が勤務していた老人ホームは夕食の時間は17 時からでした。多くの入居者やその家族から、17時は少し早すぎるので18時からにならないかという要望をいただきましたが、どうしても18時にすることができなかったと記憶しています。食事や入浴といった一日の大きな業務は、職員の勤務状態と密接にリンクしているからです。

 

普通、日勤帯の職員の勤務時間は、9時から18時までのホームが多いと思います。

 

私のいたホームでもそうでしたが、17時から食事をスタートさせ食事終了を18時にしないと、多くの職員が残業になってしまいます。それでは、勤務を1時間遅らせればいいではないかというと、10時出勤になると、今度は朝食後の排泄ケアを担当する職員が不在になってしまいます。

 

老人ホームによっては、7時から出勤、8時から出勤、9時から出勤、などと多様な勤務形態を用意し、なるべく今まで通りの生活リズムを変えない努力をしているところもあります。しかし職員管理や、万一その職員が休んだ場合の対応などを考えると、あまり多種多様な勤務形態にするのは自分の首を絞めることになります。多くの「やること」がある老人ホームの場合、食事時間だけの最適を考えることは難しく、全体最適から逆算した部分最適を検討するということに、どうしてもなってしまいます。

 

さらに、人手不足の昨今、勤務帯によっては仕事ができない職員も多く、職員が勤務しやすい勤務帯も同時に考えていかなければ、ホーム運営がままならない状況になってきているのも事実です。

 

小嶋 勝利
株式会社ASFONTRUSTNETWORK常務取締役

 

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