老人ホームのリクリエーションは盛り上がらない
15時からは、さらにレクリエーションが
15時からは、多くのホームでレクリエーションが始まります。月間レクリエーションカレンダーなるものが作成され、毎日毎日、趣向を凝らしたレクリエーションが開催されます。
レクリエーションは、職員によるものと有償無償のボランティアなどによるものとに分かれます。高級ホームなどでは、有名な歌手や落語家などを招いて、AAオンステージとか、BB寄席などと称して大々的に行なうケースも目立ちます。
また、最近の傾向としては、レクリエーションの時間をリハビリの時間として活用することも多くなってきました。理学療法士や作業療法士などのリハビリ専門職による「体操」「施術」などを、集団、個人別に実施しています。
実は、このレクリエーションは、関係者全員にとって、とても頭が痛い話なのです。
職員の気持ちを代弁するなら、「レクリエーションの担当者になんか、なりたくない」「レクリエーションは苦手だ」ということになります。入居者の気持ちを代弁すると、「レクリエーションなんか面倒だ」「ちっとも面白くない」というのが、本音です。中には、好きとか嫌いとかということではなく、自立して生きていくためには必要な行動なので、どんなレクリエーションでも積極的に参加するという、模範のような入居者も存在します。
それではなぜ、職員はレクリエーションが苦手なのでしょうか。答えは一つ。まったく、盛り上がらないからです。自立の高齢者ばかりいる老人ホームであれば、まだましですが、多くの老人ホームでは、認知症高齢者が主役です。認知症の高齢者は、当然、自分の立場を認知することができない。そもそも、レクリエーションに参加しなければならないということを認知できません。当たり前のことですが……。
したがって、「歌を歌いましょう」「体操をしましょう」「絵をかいてみましょう」などと言って誘導をしたとしても、3分ぐらい経つと「居室に帰りたい」「もう帰る」などと言って騒ぎ出します。これを業界用語では「不穏になる」と言います。
集団レクリエーションで数人が不穏になると、不穏は連鎖してしまいます。「帰りたい、帰りたい」と連呼している入居者に対し、「うるさい」「とっとと帰れ」と、他の入居者が怒鳴ります。そしてこのような状態に身を置きたくない入居者は、黙って居室に帰り始めます。その後の惨状は……皆さんの想像にお任せします。介護職員の多くは、この事態を上手く収めることができず、途方にくれるか、匙を投げてレクリエーションを中止してしまいます。