1人ずつ細かくカスタマイズされた食事時間は戦争

リアルに疑似体験─老人ホームの24 時間

入居者や家族は、老人ホームの日常をぜひ理解してほしい。これから書くことが実態であり、これが真実です。ここでは、介護付き有料老人ホームの一日を、時間軸で説明していきたいと思います。提供されるサービスの手厚さと利用料金は、比例しています。料金によっては、ここで記載されていることをしてもらえないホーム、逆に、さらに手厚くしてもらえるホームがあるということに、留意してください。

12時になると昼食が始まります

老人ホームの職員にとって、食事時間は戦争です。特に、昼食は、朝食と比べ、品数が多かったり、イベント食などレクリエーション的な要素が入ることがあるので、給仕自体に手間暇がかかります。

老人ホームでは入居者ごとに食事が違う。（※写真はイメージです／PIXTA）

多くの老人ホームでは、食堂に全入居者が集まり、全員で食事を摂ることになっています。席に着いた入居者に対し、職員による配膳が順次始まります。ここで注意しなければならないことは、入居者ごとに食事内容が違うということです。

勘違いしないでください。メニューが違うということではありません。一部の高級ホームなどでは、メニューが選択制になっていて、AランチとBランチから選べるようになっているところもありますが、多くの老人ホームではメニューは選べません。しかし、入居者ごとに食事内容が違うということは、（1）食事形態が違う、（2）食材などが違う、からに他なりません。常食といって、ごく普通の食事形態もあれば、刻み食やソフト食といって、嚥下機能が衰えた入居者でも、比較的食べやすいように工夫をされた食事形態があるからです。さらに、塩分、糖分、油分などの摂取量が医師により制限されている入居者に対しては、制限値を超えないような味付けになっています。

また、アレルギーなどの禁止食材がある入居者には代替品が用意されています。

「サバ禁」といって、青魚を食べることができない入居者には、サバの味噌煮や塩焼きなどがメニューの日には、代替品が提供されていました。

さらに、入居者が服薬している薬とリンクして、禁止になっている食材もあります。多かったと記憶しているのが、グレープフルーツです。狭心症や高血圧などの薬を飲んでいる人は、グレープフルーツは禁止になります。

最後にダメ押しですが、個人持ちの商品があります。個人持ちの商品とは、本人や家族の希望で、食事の時に提供しなければならない、個人の食材です。梅干しとかキムチといった、食事の時の付け合わせのようなものがそれにあたります。これらのものは、個人の持ち物ですが、管理を老人ホーム側で行なうケースが多いため、食事の時に配膳されます。

つまり、老人ホームでの食事は、入居者ひとり一人に対し、かなり細かくカスタマイズされたものになっているということを理解してほしいのです。

したがって、片っ端から食事を供給していけばよい、ということにはなりません。