「手術が好き」ただそれだけだった…。新人外科医が見た、壮絶な医療現場のリアル。※勤務医・月村易人氏の小説『孤独な子ドクター』(幻冬舎MC)より一部を抜粋し、連載していきます。

手術する医師が「指先を上に向けている」ワケ

手洗い、消毒を終えると手を胸の前に上げたままガウンを渡されるのを待つ。この時、指先が上を向くようにするのは、水滴が腕を伝って指先に流れてこないようにするためだ。指先はもっとも清潔に保たなければいけない。

 

「ガウンのサイズはどうしましょう」

「Lサイズでお願いします」

 

東国病院規模になるとガウンを着させてくれる看護助手さんがいる。それだけ手術がたくさん行われているということだ。

 

ガウンを受け取ると、おもて面を触らないように注意しながら腕を通す。あとは後ろの紐を助手さんに結んでもらうだけだ。

 

「手袋をお願いします」

 

最後に手袋をはめて装備が完成する。これでガウンに覆われた胴体と手袋に覆われた腕は清潔扱いとなり、頭や足、背中は不潔扱いとなる。ガウンと手袋で覆われた部分も、壁や人などに触れてしまうと不潔扱いとなり、手洗いからやり直しとなる。

 

装備が完成したら、器具やオイフ(手術中に患者の体全体を覆うカバー)など滅菌されたもの以外に触れてはいけない。もちろん自分の汗を拭ったりすることも厳禁だ。

 

続く…

 

本記事は連載『孤独な子ドクター』を再編集したものです。

 

月村 易人

 

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孤独な子ドクター

孤独な子ドクター

月村 易人

幻冬舎メディアコンサルティング

現役外科医が描く、医療奮闘記。 「手術が好き」ただそれだけだった…。山川悠は、研修期間を終えて東国病院に勤めはじめた1年目の外科医。不慣れな手術室で一人動けず立ち尽くしたり、患者さんに舐められないようコミュニ…

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