決算書を読み解けば、その企業の強みや弱み、販売戦略など、あらゆるものが見えてくる。そう、チェーン店の「コーヒーの値段」が違うワケさえも…。
ビジネスパーソンの必須スキルの1つ、「会計」。ビジネス上で必要な数字を活用することは、実は「決算書を読む」というスキルでほぼ全て得ることができるという。ここでは、「日本人全員が財務諸表を読める世界を創る」ことを目標にする筆者が、「世界一楽しい決算書の読み方」を解説。※本連載は、大手町のランダムウォーカー氏の著書『会計クイズを解くだけで財務3表がわかる 世界一楽しい決算書の読み方』(KADOKAWA)より一部を抜粋・再編集したものです。本記事に掲載の情報は特段の注や付記がある場合を除き、2019年12月書籍執筆時点での各社決算書情報を参照しています。

難しい「決算書」は誰が読むもの?

はじめまして。大手町のランダムウォーカーと申します。僕は普段、「日本人全員が財務諸表を読める世界を創る」を合言葉に、Twitter上で「会計クイズ」という全員参加型のイベントを行っています。

 

あなたは普段、「会計」や「決算書」に縁のある方でしょうか。それとも、全くない方でしょうか。少なくとも、本記事を読まれている今、「決算書の読み方」に興味をお持ちということは、間違いないと思います。

 

決算書は「一般に広く公開されているもの」ですから、どんな立場の人でも無料で読めるものです。ただ、専門用語や数字の羅列が続くため、前提知識なしには、なかなか読み解くことは難しいものでもありますね。

 

――「そもそも決算書って、誰が読んでいるんですか?」

 

確かに、最初は「あの紙って誰が読んでいるの?」と不思議に思いますよね。ごく一部ではありますが、例として挙げるならば、こんな方々が読んでいます。

 

●投資家

企業の決算書に目を通して、「これから伸びる会社か・沈む会社か」などを判断し、投資の判断材料にしています。

 

●銀行員

企業への融資(お金を貸すこと)に際して、「この企業にお金を貸して大丈夫か」などの判断材料にしています。

 

●企業の経営企画ポジション、大企業の本部長クラスなど

企業のお金の出入りを管理する経理や、事業計画を作成するための発射台となる実績を把握したり、企業買収における買取価格の価値算定をしたりする経営企画ポジションの方。また、企業のトップに今後の事業提案をする立場の本部長クラスの方も、決算書を読む能力が必要です。また、課長などの中間管理職になっていきなり「PL分析をしろ」と言われて、ほとほと困っているという方もいらっしゃるでしょう。

 

イラスト:わかる
(C)OTE_WALK 2020

 

●就活生

優秀な就活生は、決算書やIR情報などを用いて「今後伸びる企業か」「どのような事業展開を見据えているか」などを分析し、志望する企業の判断材料としています。また、企業分析から得られた情報を志望動機などに盛り込むことで、エントリーシートや面接などで、志望度合いの説得力を深めています。

 

こういった方々をはじめ、企業の経済活動には直接的・間接的にもいろいろな方が関わっていて、様々な利害関係があります。この利害関係者をステークホルダーというのですが、決算書はこういったステークホルダーのために公開されているのです。

「実在する企業の決算書」こそ最適な勉強素材

しかし、先にも述べた通り、決算書は何も知らないまま読み込もうとすると、結構難しくて挫折しやすいものでもあります。「入門書を何冊も買って読んでしまう」「何回読んでも、なんとなくしかわからない」という声をよく聞きます。

 

これはなぜかというと、一番の理由は「読んでも、自分ごととして理解できないから」ということです。会計の入門書の多くは、「よりかんたんに、わかりやすく」するために、架空の企業の財務諸表をもとに勉強できるようになっています。

 

ただ、サンプルの決算書例を見て数字を追うだけでは、顔のない人の名前を覚えるようなもので、理屈の理解はできても記憶に定着しませんし、本心から納得するのは難しいでしょう。

 

また、サンプルの例だけを見ていては、当然ですが企業の戦略をひもとく能力は身につきません。

 

つまり、最短で決算書を「読む」力をつけるためには、実在する企業の決算書を読むのが一番手っ取り早いのです(ここでいう「読む」とは、会計的な分析の話ではなく、ビジネスパーソンが販売戦略を分析したり、その分析をもとに、具体的な新規の打ち手までイメージできる能力のことを指します)。

 

もちろん、利益率や負債比率などの会計的分析は有用ですが、これらの数値を計算できるようになることは、単なる「把握」のステップに過ぎません。決算書を読む目的は、企業を分析し、分析をもとに具体的な打ち手を考えることにあるはずです。

 

決算書に挑む際に、それが知っている企業や興味のある企業であれば、おのずと推測しやすく、興味も持ててなおよいでしょう。

 

ただ、前提知識がない状態のまま一人で決算書に突撃しても、謎の数字の羅列という壁の前で撃沈するのみであることは、すでに皆さんがお察しの通りです。

 

そのため、本連載では「実際の企業の決算書を様々な視点で読み解きながら、決算書のキホンのキが自然と身につく」ような仕掛けをほどこしました。

 

その仕掛けを、ここで少しだけお見せしましょう。

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