医師ならではのコンセプトがプラスされたとき…
不動産運用で収益を上げる秘訣は、安く買ってその後に付加価値をつけることであり、これは鉄則ともいえるでしょう。
その付加価値とはいわゆる「コンセプト」です。たとえ一般的には人気の低いエリアでも、医師ならではのコンセプトがプラスされたとき、その物件は周辺のどの物件よりも収益率の良い存在になります。
たとえば詳細は後ほど説明しますが、シングルマザーの多い土地柄なら託児所を併設した
「シングルマザーシェアハウス」や、高齢者が多い地域ならおじいちゃんやおばあちゃんが日帰りで利用できる「デイサービス付き高齢者住宅」といったオーナーが医師であることを活かしたコンセプトです。
ほかにも、かつて医大生だった頃にどんな賃貸マンションが欲しかったか、今オーナー医師として何かアピールできることはないかを考えて、医大や大きな病院近くの物件を医大生や看護師向けの賃貸住宅にするといったコンセプトもあります。定期的に情報交換会を開催したり、エントランスなどの共用部分に専門書の貸出コーナーを設けるなどで差別化を図るのです。
このように医師ならではのコンセプトを明確に打ち出せれば、多少人口の少ない地方都市でも十分に経営が成り立つはずです。同時にシングルマザーや高齢者がイキイキと生活できるといった地域の活性化にも役に立てるでしょう。
逆にいくら都心に近く、いい立地でもコンセプトがない平凡な物件では選ばれる理由がなく、建物が老朽化するにしたがい、入居者募集が困難になるはずです。
ただし、どんなに画期的なコンセプトでも、過疎地のような人が集まらない土地はおすすめしません。町おこしなどの地域の活性化は行政が動かないと難しいものがあります。やはりある程度の人口規模が下地にあった上でのコンセプトといえます。
海外不動産投資・進出でも「コンセプト」を重視
また、「周辺エリアの医師の数」「コンセプト」という土地選びの視点はなにも国内に限ったことではありません。
現在は人もモノもグローバル化しています。かつては「メイド・イン・ジャパン」がもてはやされましたが、今は「メイド・バイ・ジャパン」に変わっています。
このような流れの中では、海外の物件を購入して現地で医療サービスを提供するという手も十分勝算があります。たとえば定年退職した人の移住先として人気の高いマレーシア、フィリピン、タイ、インドネシア、カナダ、カンボジアなどが狙い目です。
所有している物件からきちんと家賃収入があれば、勤務医として過酷な状況で働かなくても物価の安い海外なら十分暮らせるでしょう。海外で気ままにリゾートライフを送りながら、現地で移住者を対象に開業もけっして夢ではありません。
右も左も分からない海外での開業など現実的ではないと思うかもしれませんが、海外でも経験豊富なエージェントに仲介を依頼すれば問題はありません。実際、私は知り合いの医師と一緒にカンボジアで事業を始めています。
コンセプトは不動産会社が立案してくれる
収益物件の経営を軌道に乗せるには、物件にコンセプトがあるかどうかが重要です。さらに医師ならではのコンセプトなら鬼に金棒でしょう。
ところが、コンセプトというものはすぐに思いつくものではありません。まして多忙な医師の皆さんに、そのことを考える余裕はないでしょう。そこで頼りにしたいのが収益物件の仲介や販売を行う不動産会社となるわけですが、当然すべての不動産会社がコンセプト立案に優れているわけではありません。そのため、一般的な営業手法は、立地と利回りのアピールとなってしまいます。
では、どうすれば理想的なコンセプトを立案できる不動産会社やパートナーに出会うことができるのか?
それは話を聞きに行って、実際に担当者の「提案力」と「実行力」を確認することです。まず、「何か提案はない?」と聞いたときに「ありません」と即答するようでは論外です。多少時間がかかっても企画書を持ってくる提案力が必須です。
次にこの提案が絵に描いた餅ではなく、実現可能かどうかを見極める必要があります。実現するためのスケジュールを確認し、1か月後、2か月後にどのような状況になっているか、そして完成はいつなのか。それまでにかかるコストと、その後の収支計画に無理がないのか。ここまでもれなく説明できる実行力があれば、営業担当としてのスキルは心配ないといえるでしょう。
ただし、いくら美しい提案でも皆さんをやる気にさせなければ意味がありません。不動産は高額商品です。「提案の筋は通っているけど、何となくやる気になれない」ということもあるでしょう。私は経験上、その「何となく」の多くの原因は不動産会社の担当者など、パートナーにあると考えています。皆さんが「この人なら任せられる」と思える条件は何でしょうか?
一言でいってしまえば「安心感」だと思います。
Aさんは理詰めの説明、Bさんは趣味の話、Cさんはお酒が一緒に飲めること、Dさんは子どもが同世代、Eさんは医療に対する知識など、安心を感じるポイントは人それぞれです。これは相性としか言いようがないかもしれません。
「本当はこんな医療施設をつくりたい」
「提案力」と「実行力」があることが判断できたら、「このパートナーに本音を話すことができるか?」と自問自答してみてください。医師が不動産運用を行うにあたって、パートナーは女房役です。年収や預金、そして将来の目標などをすべてさらけ出す必要があります。逆にサポートする側からすると、さらけ出してもらわないと、何年ローンがいいか、どこの金融機関がいいかといった最適な提案ができません。
担当者はそのことをよく知っているので「本心で話してください」というスタンスで接してきます。このときに何か違和感があるようなら、あなたはまだその人を信用していないということでしょう。もう少し時間をかけてみる、または打ち解けるために飲みに行くといった手もあります。どうしても合わないなら上司に連絡して担当を代えてもらうか、違う不動産会社などへ相談するべきでしょう。
私はクライアントである医師とよく飲みに行きます。最初はビジネスライクな会話でスタートしますが、やはりお酒がちょっと入ってくるとお互いに腹を割ってくるものです。
「本当はこんな医療施設をつくりたい」「あとX千万円あれば目標達成なんだ」といった話が聞けて、「ならばこうしましょう」とオフィスではけっしてできなかった仕事の話がとんとん拍子に決まることが多々あります。ある医師は後から「あのときの会話で人生が変わった」と言ってくれたこともありました。
もちろん何もお酒に頼る必要はありませんが、とにかく不動産運用には腹を割ってじっくり話せるパートナーがいることが重要だということです。