不動産はただの箱。そこに何を入れるかが重要
医師が不動産投資を始めると、「付加価値」もつけることが可能になります。不動産投資は、お金さえあればもちろん、誰にでも始めることができます。しかし、成功している不動産投資家は圧倒的に医師の方が多い。それはなぜかというと、これからの不動産投資において最も必要なことを、医師はあらかじめ備えているからです。
土地? 資金? 時間? やる気? 情報? 分析力?
もちろん、これらは不動産投資を行い、成功させる上でとても大切な要素です。ただ、筆者が最も必要だと考えているのは少し違います。何も不動産投資に限ったことではありませんが、成功させるカギは強い信念と、それを行う必然性だと考えています。この必然性には社会的な要因が関わってきます。
まずは筆者がこれからの不動産業界がどのようになっていくと考えているのかをご紹介しましょう。
少子高齢化社会を迎えている状況の日本は、すでに死亡者数が出生者数を上回るという人口の自然減が始まっています。総務省統計局が発表した資料によると、住宅数が増えている一方で、空き家数や空き家率も上がり続けています。つまり、今後の賃貸住宅市場においては入居者獲得の競争が激化することが目に見えているというわけです。
不動産+医療サービス=無限の可能性
では、そんな時代にあえて不動産投資をするメリットはあるのでしょうか?
答えは〝イエス〞です。ただし、もはやかつてのバブル経済のときのように、不動産を買い、所有するだけで価値が上がっていくという時代ではありませんし、誰でも不動産のオーナーになれば成功するというわけでもありません。実際、過去に不動産に投資した人の中には損をしているケースもあります。
現在は地価も含めて不動産価格が大きく下がっています。もちろん価格が上がらなければ儲かることはないわけですが、ここで今後価値を上げるであろう社会的な要因が存在します。それが少子高齢化であり、医療ニーズの増大です。
そもそも不動産といっても、言ってしまえばただの箱です。この箱の中に、これから需要の高まる中身を入れることができれば、確実に投資は成功します。
これから需要の高まる中身にあたるのが「医療」と「健康」。取得した不動産をそうしたニーズに合わせて運用していくことが、物件の価値を最大限に高めることにつながると私は確信しています。そして、医師こそ不動産を医療や健康のために使うことができるのです。式にしてみると次のような感じです。
不動産+医療サービス=無限の可能性
不動産という箱の中に、医師にしかできない医療サービスという中身を詰めることができれば、そこから先は無限の可能性が広がります。そんなわけで、筆者は今、医師こそが不動産の価値を高め、最大化するのに最適の職業だと強く感じているのです。
多忙な医師にとって株式投資は不向き
単なる資産運用であれば、別に不動産でなくとも、株などで運用すればいい、と考える人も多いかもしれません。資産運用というと、まず思い浮かぶのが不動産と株式投資です。実際に、株式投資を行っているという医師も少なくないでしょう。筆者が資産運用のアドバイスをしている医師の多くも、不動産と同時に株式も所有しています。ただ、資産運用という面では、私は株式よりも不動産の方が医師に向いていると考えます。
株式投資のメリットのひとつが、短期間で換金できるという流動性の高さにあります。オープンなマーケットで日々売買されている株式は、時々刻々と価格が変動し、値動きにあわせてすぐに利益を確定することができます。しかし、株式市場は誰にでもオープンになっている以上、そこでのプレーヤーは、皆同じ条件で戦わなくてはなりません。
そこではせっかくの「医師」という肩書きは全く無意味になります。さらに、株式売買によって利益をあげるためには常に変動を続けるマーケットを注視し、先を読み、タイミングよく売買を行う必要があります。
また、日々激しい変化を繰り返しているビジネスについては、やはりビジネスマンのほうが精通しているのは当然のことでしょう。他人の生命を預かり、多忙な日々を送る医師にとって、株式投資はなかなか難しい資産運用の方法であるといえるのではないでしょうか。
不動産は流動性が低く、開業場所の確保にもなる
一方、不動産は換金までに最低でも数週間、場合によっては数カ月間かかることがあります。その分、価格も数カ月、数年という単位でしか変動しません。一般に、医師の中でも特に時間に余裕がないといわれている勤務医と兼業しながら運用益をあげられるという意味で、この流動性の低さこそがメリットであると考えられます。
さらに、医師が医師として働くためには、病院や医院などの「場所」が必要不可欠です。つまり、医師が不動産を所有するということは、将来的な開業に向けた場所をあらかじめ確保しておくという意味でもベストな資産運用というわけです。
「医師」という肩書きと「不動産」という場所が少しずつリンクしてきました。医師だからこそ可能で、医師だからこそ意味のある不動産投資。そんな医師のための不動産投資について見ていくことにしましょう。
開業を検討するなら「医師不足の地域」が狙い目
先日、とある医師の方とお会いする用件で、埼玉県の大宮を訪れる機会がありました。ご存知の方も多いと思いますが、大宮駅はJR埼京線で新宿からわずか30分。東武鉄道、埼玉新都市交通などが乗り入れる巨大なターミナルステーションです。
埼玉というと、どうしても首都東京のベッドタウンという印象が強いのですが、なかなかどうして、715万の人口を抱える埼玉県の経済都市として大宮駅周辺はとても賑わっています。
何が言いたいかというと、埼玉県は厚生労働省が発表している「人口10万対医師数」というデータ(都道府県別に10万の人口に対して何人の医師がいるかということを示したもの)で見事(?)ワースト1位の栄冠に輝いた県だということなのです。
つまり、日本で最も医師が不足している県であり、これから開業するのであれば埼玉県は、最適なエリアのひとつといえるでしょう。
医療サービスの後付けで、容易にバリューアップ可能
聞くところによると、医師の数が多い東京都内よりも埼玉や千葉(ワースト3位)の医師の方が高給を得ているという話もあるほど、両県では医師が求められています。
不動産投資というと、不動産そのものの価値はもちろん、周辺の人口構成や交通アクセスなどさまざまな要素を分析する必要があります。交通アクセスが良く、周辺環境も良く、物件自体も新しくて快適、という誰にとっても魅力的な物件は、当然、その分購入価格が高くなりがちです。
ところが、医師であればそれらの〝一般的に良い物件〞と考えられる条件と同じくらい、〝その地域に医師が多いか少ないか〞という条件も加えることができます。これなら一般的な不動産の価値とは基準が少し異なりますから、医師にとって魅力的な物件を安く購入することもできるというわけです。そして、将来的にその不動産を「医療関係の施設」として利用すれば、不動産の価値が大きく高まる可能性があるのです。
不動産投資で収益をあげるためのセオリーは、なるべく安く買って、その後物件の付加価値をつけること。これに尽きます。
その点、医師であれば一般的には魅力の少ない(価値の低い)物件であっても、後から医療サービスを付加することによって容易にバリューアップできるのです。たとえば高齢者専用賃貸住宅やサービス付き高齢者向け住宅などはその最たる例でしょう。
これは、単なるリフォームや家具付き住宅の提供といったバリューアップとは比較にならないくらい大きなバリューになると筆者は考えています。そしてそれは医師にしかできない不動産投資の方法なのです。