知識があれば賃貸住宅経営のリスクは軽減できる
データをもとに自分なりの仮説を立てる
「不動産投資法に正解なし」
こう話していたのは、サラリーマン時代の2006年に1棟目の不動産を購入し、2019年9月現在、10棟173戸の賃貸住宅を所有する大阪府在住の松田英明さんだ。「関西大家の会」の代表も務める松田さんは次のように指摘する。
「ある物件を購入した場合、その人には良い投資であっても、別の人には悪い投資かもしれない。なぜなら、それぞれが目指すゴール、それぞれの資産背景によって、投資法の正解は変わるからです。特定の投資法だけを取り上げて肯定したり、否定したりするのは全くナンセンス。成功体験は、あくまでその人が目指したゴールや持ち合わせる能力、資産背景から導き出されたもの。成功者の投資法をそのまま真似をするだけで、すべての人が成功できるなんていうことはない。投資家が一番考えるべきことは、ゴールから逆算することです。専業大家を目指すのか、将来の老後対策なのか、単なる資産運用なのか。そういった具体的な目標が一番大切です」
本連載を読んでくださっている方は、まずは老後の安定した収入源をつくるという目的の方が多いのではないだろうか。しかし、本書を読み終わったときには、サラリーマンは早めに卒業して、できれば専業家主として収入を得ていきたいと考える人もいるかもしれない。あるいは現在は違う商売をしているけれど、将来続けていくことに不安を抱いた人が転業を検討するケースもあるだろう。さらに、ある程度資産ができたので、子供に円滑に相続させたいと考える人もいるだろう。いずれにしても、松田さんが指摘するように、どのような手法で不動産を購入し家賃収入を得ていくのかは、目的、これまでの経験によって異なるというわけだ。
「知識があれば賃貸住宅経営のリスクは確実に軽減できる」と話す松田さんは、例えば、人口減少は家主業において決してリスクではないという。リスクとは不確実性であり、人口減少は、さまざまな角度から将来の推計値が公表されていて、経済に関する数値の中で最も確度の高いものの一つだ。その数値を考慮した上で家主業を営めばいい。多くの人は、その背景を理解しようとせずに数値だけを鵜呑みにし、リスクと騒いでいるだけで、自身は本当のリスクとは思っていないというのだ。