バラ色のセールストークにトゲがある
「自己資金ゼロでも買えます」
不動産情報は、基本的に不動産会社から得るケースが多い。新築であれば、新築不動産の販売会社、中古であれば仲介会社か、再販会社だ。家主の仲間がいない人の場合、不動産について教えてくれる人は不動産会社の営業マンしかいないため、つい彼らの話を鵜呑みにしてしまいがちだ。「自己資金ゼロでも買えます」「初心者で不動産について知らなくても大丈夫。私たちがサポートします」「ここでしか手に入らない物件情報があります」などなど……。
営業マンはこうしたトークで不動産販売の営業をする。この3つのトークだけで、不動産購入の障壁は低く、素人でも簡単に始められるものだと思ってしまう人も少なくない。しかし、ここまで本連載を読んだ読者の方たちであれば、これらのセールストークに問題があることに気づくだろう。
「自己資金ゼロ」については、2017年までと異なり、現在、金融機関の不動産投資に対する融資姿勢が厳しくなっているため、アパートや一棟マンション、戸建てなどは自己資金がないと購入しにくくなっている。ワンルームマンションなどの区分マンションはフルローンでも購入可能だが、フルローンで購入すると、返済比率が高いため、家賃収入の大半が返済に回ってしまい、空室が発生したらプライベートの預金口座からローンの返済を行わなければならなくなる。フルローンのリスクを知って不動産を購入しないと、資産を増やすことを目的に始めたのに、気づいたら減っていたということになりかねないのだ。
「不動産について知らなくても大丈夫」
サブリースは、家主が所有する賃貸住宅を1棟丸ごと全戸借り上げ てくれるため、空室という賃貸経営における最大のリスクを回避できる。いわゆる「安定した家賃収入」を保証するのがサブリース契約であり、家主が委託するメリットになる。安定した家賃収入を保証してくれるばかりか、入居者募集、家賃集金、問い合わせ、退去の手続きまですべて行うので、サブリース契約付きとなると、素人の家主たちは「これは楽だ」と思って喜んで契約してしまうのだ。
だが、サブリースにはデメリットもある。空室リスクは回避できるが、家賃を下げられてしまう可能性がある。サブリース会社は、上場企業であっても、「借地借家法」では社会的立場の弱い「賃借人」であり、その賃借人が持つ「家賃の減額請求権」という権利が認められているからだ。
さらに、サブリース会社からはサブリース契約を解約しやすいが、社会的立場の強い家主は、正当な理由がない限り一方的に解約することができない。上場企業という資本力のあるサブリース会社と個人の家主の権利関係が、上場企業の方が有利という逆転現象が起きていることも問題を難しくしている。
なぜなら、契約書の原案を作成するのは、基本的にサブリース会社側であり、その内容は、素人 の家主では解読しにくい文書で記載されているからだ。何が問題なのか、一般人では見極めることができない契約内容になっており、法律の専門家に確認してもらうと、「この文言が家主にとって不利になる」という内容が含まれているケースもある。そのため、サブリース契約あるいは売買契約をする際は、第三者の立場にある専門家に確認してもらうことがリスクヘッジになる。