金融機関は医師にお金を貸したがっている!?
日本政府は景気対策のために今後も金融緩和を継続していく方針のため、金融機関にはお金が余っていくはずです。
「インフレが進むなか、労働人口の大多数を占めるサラリーマンの収入は上がらないだろう。リストラだってあり得る。ならば少数でもお金持ちへ。そのなかでも将来の安定性が約束されたドクター。特に勤務医だ」。このようなロジックで金融機関は、今まで以上に医師へお金を貸したがっています。
ある銀行員は「年収5000万円の外資系会社員と年収1500万円のドクターならドクターのほうにお金を貸す」とまで言い切っていました。
また、筆者のクライアントの女性医師は、育休中にもかかわらず一回で融資審査が通りました。しかも医師だからという理由で、サラリーマンなら絶対あり得ないほどの年収倍率の金額を借りることができたのです。信用力がある医師ならばこのように数年先の年収、いわゆる「見込み年収」で融資を受けることも可能です。
資産形成には「レバレッジ」効果の活用が不可欠
資産運用を成功させるために、もっとも活用すべきは「レバレッジ効果」です。
レバレッジ=テコ。つまり少ない資産を元手に、大きな取引をすることです。最上位の個人属性である医師ならば、金融機関はたとえ現在の年収が少なくても不動産運用のためならばより低金利で、より多額の融資をしてくれます。上限額の目安は年収の20倍前後、年収1500万円なら3億円です。一般的なサラリーマンなら10倍がいいところですから、年収500万円ならば5000万円です。
予算が3億円あれば、都心近くに20戸ほどの鉄筋コンクリート造マンションが買えます。家賃が月々10万円なら年間の家賃収入は2400万円になります。一方、5000万円しかなければ、地方都市に8戸ほどの木造アパートといったところです。家賃が月々5万円なら年間の家賃収入は480万円程度です。
年収は3倍なのに家賃収入は5倍、これがレバレッジ効果です。いかに医師が不動産運用に向いているかが分かります。
筆者は医師以外にも高所得者の知り合いが多数いますが、不動産運用をしないで10億円以上の資産を持っている人は一人もいません。
10億円以上の資産を持つ人の多くは、不動産運用以外にも株など複数の収入源を持っています。しかし、彼らはこれらで稼いだお金を最終的に不動産購入の頭金へ回します。結局、安定的に億単位の収入を得る手段は不動産なのです。
レバレッジ効果は「借金」をすることで生まれる
融資とは借金です。日本人は「借金=悪」と考える人が多く、「借金をすればいいでしょう?」と言うと、ほとんどの人が「とんでもない!」と答えます。特に事業資金を借りると聞くと、「あそこは自転車操業をしている」と後ろ向きにとらえるようです。
起業が盛んな欧米と違い、日本では借金に対して小さい頃からマイナスのイメージを植え付けられているからでしょう。しかし、私たち資産運用の専門家から見れば、それはただの「食わず嫌い」です。借金を恐れてはいけません。
「レバレッジ効果=借金効果」。経営学的にはこのような式が成り立ちます。借金をしない限りレバレッジ効果はあり得ません。同じ1500万円の年収でも、レバレッジ効果を利用するかしないかによって、リタイア後の資産に数千万円と10億円ほどの差が生まれるのです。それでも借金は怖いですか?
たとえば借金が怖い人は、住宅ローンを組んだときも繰り上げ返済でできるだけ早く返そうとします。しかし、よく考えてください。現在の住宅ローンの金利は1%から2%といったところです。こんなに低金利なら放っておいて構いません。繰り上げ返済をする資金があるなら、7%や8%といった利回りの不動産運用に回したほうが、効果的な資産形成ができるのではないでしょうか。
実際、運用するとなったときには金利2%から3%の借金をすることになりますが、それでも繰り上げ返済をするより手元に残る資産は多くなります。
融資を受けられるのが不動産投資の最大の魅力
さらに不動産運用には、節税というメリットもあります。金融機関は、株やFXの運用資金には融資をしてくれません。なぜなら、これらの資産価値はゼロになる可能性があるからです。
ところが不動産運用は、不動産そのものに担保価値があり、家賃収入も見込めるので融資の対象となります。経営にしても、事業についての知識がない素人が一般的な金融機関から借りられる資金は、不動産運用以外にあまり見当たりません。
万一、ローンの返済ができなくなったとしても不動産であれば売却が可能ですし、普段は医師としての収入で生活していれば、路頭に迷う可能性は極めて低いといえます。それどころか、それまでの家賃収入が貯蓄として残るのです。
また、ほとんどの勤務医、特に公的病院に勤めている場合は副業が禁止されているはずです。しかし、親からの相続といったことも想定される不動産の運用は、禁止対象から外れます。医師だから活かせる絶大なレバレッジ効果。この最大の武器を利用しない手はありません。
ただし、金融機関によって融資額の上限や金利は異なります。多忙を極めるドクターに、各金融機関に交渉する時間はほとんどないはずです。そのため医師が不動産運用で成功するには、その道に詳しい不動産会社や会計士などの専門家を事業パートナーに持つことが重要といえるでしょう。
不動産ポータルサイトの利回りは信用してはいけない
ターゲットとなる物件の条件も予算確保の方法も分かりました。では、いざ物件を探すにはどうしたらいいのか――多くの人は不動産ポータルサイトを見るか、収益物件専門の不動産会社を探すと思います。しかし、前者はお勧めしません。
現在、物件探しの主流はインターネットです。希望の物件があるエリアにわざわざ行かなくても建物の様子や価格、利回りなどの情報を簡単に入手できます。
「スーモ」や「ホームズ」「ヤフー不動産」といったメジャーなサイトから、「楽待」「クリスティ」「健美家」など、収益物件の専門サイトは多種多様です。日本全国すべての情報が網羅されているように感じます。「これだけの情報があれば、いくらでもお宝物件が見つかりそう」と思ってしまうでしょう。
ところがそれが落とし穴です。まず収益物件を探すなかで、もっとも気になる利回りでさえ信用できません。
「利回り」とは物件価格に対する年間の家賃収入の割合です。たとえば1億円の物件の家賃収入が年間1000万円なら利回りは10%となります。つまり10年で物件購入価格を回収できるということです。
この数値が高ければ高いほど収益性の良い物件ということになるのですが、先ほどのような不動産ポータルサイトに表示されている主な利回りは「表面利回り」と言われるものです。これは満室状態の家賃収入から割り出した数値になりますが、実際には常に満室になるわけではありませんし、基準となる家賃もいずれ下げなければいけなくなります。さらに、物件の状態によってはすぐに補修工事が必要となる場合もあり得ます。
本来、利回りというものは、ある程度の空室やその周辺地域が持つそれぞれの特徴を加味した「実質利回り」を指すべきです。しかし、ほとんどのサイトの情報からはそれを読み解くことはできません。
物件価値を高めるため、実際の情報と異なる表示も
不動産ポータルサイトの情報は極めて少ないものが目立ちます。時間があれば各物件の詳細情報を確認してみてください。「間取りが分からない」「写真がない」というものはもちろん、なかには「価格と住所以外の情報がない」といった物件も多数見つかるはずです。
さらに、その情報も正確かどうかは分かりません。そこには同業者としてはずかしいことですが、不動産業者のモラルの問題があります。そもそも不動産表示に関する公正競争規約では、嘘をつかないことはもちろん、消費者が不動産を選ぶ際に表示するべき事項が定められています。
不動産広告には以下の事項について表示基準があります。
●物件の内容・取引条件等に係る表示基準
1.取引態様
2.物件の所在地
3.交通の利便性
4.各種施設までの距離または所要時間
5.団地の規模
6.面積
7.物件の形質
8.写真・絵図
9.設備・施設等
10.生活関連施設
11.価格・賃料
12.住宅ローン等
13.その他の取引条件
●節税効果等の表示基準
●入札及び競り売りの方法による場合の表示基準
たとえば、「4.各種施設までの距離または所要時間」の場合、基準となる徒歩時間は1分で80メートルとして表示することになっています。しかし、各担当者の感覚や、地図を見てだいたいの距離で出されたもの、あるいは少しでも価値を上げようと短めにされているものなど、実際の所要時間とは異なる表示がされているものも少なくありません。
また、不動産広告は「宅地建物取引業法」と「不当景品類及び不当表示防止法」によっての誇大広告が禁止されています。そのため、公正競争規約では、次のような用語について表示内容を裏づける合理的な根拠がある場合を除き、その使用を禁止しています。
■特選、厳選
■日本一、抜群、当社だけ
■完全、完ぺき、絶対
■格安、掘出、底値
■完売など著しく人気が高く、売行きが良いことを意味する用語
■最高、最高級など最上級を意味する用語
ところが、新聞折り込みの不動産チラシなどで「眺望最高」「日当たり抜群」といった売り文句を日常的に見ていないでしょうか。残念ながら不動産業界は未だにこのようないい加減な業者が多いため、広告の信用性も高いとはいえないのです。
不動産業界には姑息な手で契約をとる悪質な業者も・・・
業者のモラルという意味では、以前筆者のところへ相談に来たドクターでこのような人がいました。
彼は不動産運用に関してすでにかなり勉強しており、インターネットを駆使してある中古物件を見つけていました。その物件は現状として満室で利回りが周辺の相場よりも若干高く、価格も手が届く範囲でした。また、現地へ行って物件を確認しても特に問題は見当たらなかったそうです。
そこで購入を決意。ローンの審査もすんなり通り、売買契約に至ります。ところが数日後、再度現地に行くと衝撃の事実が発覚しました。2階の1部屋にはカーテンがかかっておらず、どう見ても入居者のいる気配がないのです。急いで仲介した不動産会社に駆け込み、問いただすと「満室という表示がありましたか? それならサイト運営会社のミスですね」と開き直って答えたそうです。
その態度からしても確信犯としか思えません。そこで、このドクターは知り合いのドクターに紹介してもらい、筆者のところに相談にきたわけです。
結局、この契約は様々な交渉の末、解除できましたが、このような悪質な不動産業者は、実際に多くいます。そして、マンガや小説に出てくるような姑息な手で何とか成約に結びつけようとするのです。