1週間の食事拒否…96歳男性元裁判官の妻も知らなかった過去

どうやって老人ホームを選んだらいいのか? それには入居者の生の声を聞くのが一番と、国内最大の老人ホーム紹介センターを経営する著者は断言します。そこで著者は、数々の入居者のエピソードを通して、ホームでの暮らしの悲喜こもごもを紹介。現在、国内最大の老人ホーム紹介センターを経営する著者が、実は知らない老人ホームの真実を明らかにします。本連載は小嶋勝利著『老人ホーム リアルな暮らし』(祥伝社新書)の抜粋原稿です。

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1週間の食事拒否で修行僧のような生活に入る

■エピソード17
ご先祖さまは有名な歴史上の人物。元裁判官の話

 

Iさんは96歳の男性、要介護1の認定を受けていますが、ホーム内での扱いは自立です。奥さまと入居しています。ちなみに、奥さまは、軽度の精神疾患を患っていますが、いたって健康、毎日外出をしてアクティブに過ごしています。実は、Iさんの先祖は、日本の歴史に出てくる著名人です。誰もが学校の日本史の時間に一度は目にする歴史上の人物。

 

Iさんは、元裁判官です。正確に言うと、裁判所を退官し、公証人としてしばらく働き、最後は弁護士になったそうです。とにかく無口で、誰も話し声を聞いたことがないのでは? と思うほど、言葉を発しません。奥さまによると、昔から必要最低限のことしか話さなかった人なので気にしなくていい、その分自分がおしゃべりだからと言って笑っています。

 

食事拒否のハンスを定期的に行う入居者も。(※写真はイメージです/PIXTA)
食事拒否のハンスを定期的に行う入居者も。(※写真はイメージです/PIXTA)

 

そんなIさんですが、困ったことが一つあります。それは、ハンストを定期的に実施することです。1週間にわたり食事を拒絶し、修行僧のような生活に入ります。奥さまによると、若い時から、定期的に断食をすることが健康法だったと言い、心配する気配もありません。しかし、高齢ということもあり、さらに、ホームの看護師の見解では、単なる自主的な断食ではなく、認知症状に起因する一つの症状ではないか?と疑っています。主治医に確認しても、いつも1週間程度で終わるのだから、心配する必要はない、水分補給だけ気にかけておけば良いのでは? と言って取り合ってくれません。

 

そんなある日、いつものように食事の拒否が始まります。奥さまに報告すると、「そろそろ始まると思っていたのよ」と言って、いつもの調子でデパートに買い物に出かけていきます。断食が始まり4日が経ったとき、奥さまが血相を変えて看護師のところに来ました。「主人がベットから起きてこないのよ」と。看護師が駆けつけるとIさんは仰向けにベッドに寝ています。目を閉じて微動だにしません。看護師が呼びかけると、うっすらと目を開け、看護師を確認するとまた目を閉じてしまいます。いつもは楽天的な奥さまが、何かいつもと違う異変を感じ取ったのか、看護師に「何とかしてください」と懇願しています。

 

血圧を測ると少し低いようです。先生に連絡をとって指示を仰ぎます、と言って居室を出ていきます。しばらくして看護師が点滴セットを引きずりながら居室に入ってきました。奥さまに対し「医師より点滴指示があったので点滴を始めます」と説明します。

 

ここからが大変です。Iさんは、突然ベッドから起き上がり、点滴をやらせまいと抵抗します。看護師との押し問答が続きます。とはいえ、Iさんはしゃべりません。体だけで抵抗しています。奥さまが「お願いだから看護師さんの言うことを聞いてください」と懇願しますが、抵抗は止みません。ことの次第を聞きつけた他の看護師が加勢に入ります。その日は、運よく大学病院の救命救急で長年働いていた看護師も出勤していました。彼女は抵抗するIさんに対し、まったくお構いなしと言った具合で、力ずくで、ねじ伏せてしまいます。手早く針を手首に留置し、点滴を開始、Iさんに対し「子供じゃないんだから手を焼かせない」と、お説教が始まります。人の命を助けるためには、多少手荒なこともいとわない、救命救急の看護師は、やはり肝が据わっています。遠慮というものがないようです。

株式会社ASFON TRUST NETWORK 常務取締役

(株)ASFON TRUST NETWORK常務取締役。1965年神奈川県生まれ。日本大学卒業後、不動産開発会社勤務を経て日本シルバーサービスに入社。介護付き有料老人ホーム「桜湯園」で介護職、施設長、施設開発企画業務に従事する。2006年に退職後、同社の元社員らと有料老人ホームのコンサルティング会社ASFONを設立。2010年、有料老人ホーム等の紹介センター大手「みんかい」をグループ化し、入居者ニーズに合った老人ホームの紹介に加えて、首都圏を中心に複数のホームで運営コンサルティングを行っている。老人ホームの現状と課題を知り尽くし、数多くの講演を通じて、施設の真の姿を伝え続けている。

著者紹介

連載実は知らない老人ホームの真実

誰も書かなかった老人ホーム

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小嶋 勝利

祥伝社新書

老人ホームに入ったほうがいいのか? 入るとすればどのホームがいいのか? そもそも老人ホームは種類が多すぎてどういう区別なのかわからない。お金をかければかけただけのことはあるのか? 老人ホームに合う人と合わない人が…

老人ホーム リアルな暮らし

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今や、老人ホームは金持ちが入る特別な存在でななく、誰もが入居する可能性の高い、社会資本です。どうやって老人ホームを選んだらいいのか?それには入居者の生の声を聞くのが一番と、国内最大の老人ホーム紹介センターを経営…

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