どうやって老人ホームを選んだらいいのか? それには入居者の生の声を聞くのが一番と、国内最大の老人ホーム紹介センターを経営する著者は断言します。そこで著者は、数々の入居者のエピソードを通して、ホームでの暮らしの悲喜こもごもを紹介。現在、国内最大の老人ホーム紹介センターを経営する著者が、実は知らない老人ホームの真実を明らかにします。本連載は小嶋勝利著『老人ホーム リアルな暮らし』(祥伝社新書)の抜粋原稿です。

引きこもり女性入居者

■エピソード18
ロックンロールとリハビリが生きがい

 

Hさんは、76歳の女性で要介護3です。2度の転倒骨折で、車椅子生活を余儀なくされています。彼女によると、ここに来る前に入居していたホームで、1回は自室で転倒し骨折、急変時に病院に搬送中に救急隊の担架から転落して同じところをもう一度骨折したそうです。そして、車椅子生活になってしまったと言います。

 

Hさんのサマリ(前のホームからの紹介状のようなもの)によると、車椅子生活になった原因の一つに、彼女の性格があると記載されていました。めんどくさがり屋で、ずぼらのHさんは、医師による歩行訓練をさぼり、楽だからと言って居室で寝てばかりいて、結果として、歩けなくなってしまったと言います。さらに、このめんどくさがり屋の性格が原因で、3度の食事も食堂では摂らず、自室で食べていました。

 

歩行練習をさぼり、歩けなくなった入居者だったが。(※写真はイメージです/PIXTA)
歩行練習をさぼり、歩けなくなった入居者だったが。(※写真はイメージです/PIXTA)

 

毎日、ほとんどを自室から1歩も出ないで暮らすスタイルなので、廃用性症候群には要注意との内容のことが記載されています。現代ふうに一言で言うと「引きこもり」ということになります。

 

そんなHさんが、ホームに転居してきました。自家製の杖フォルダーを車椅子の背面に装着し、これまた特別仕様の杖が刺さっています。さらに、前面にも可動式の大きなテーブルが完備されており、簡単な食事ならこのテーブルで対応できるため、車椅子から降りるという行為が不要です。さらに、われわれを驚かしたのは、車椅子にCDデッキが装備されていることです。付き添いの介護職員によると、車の中などでこのCDデッキを使って音楽を聴いているということでした。表現は適切ではありませんが、まるで暴走族が使用する改造車のような仕様です。

 

彼女は、カスタマイズされた特別仕様の車椅子を自在に操ります。76歳と老人ホームの入居者の中では、比較的若いので、顔の色つやも他の入居者よりも生き生きしています。われわれとの挨拶もそこそこに、自室に入ってしまいました。自室に入ると、すぐにベットに横になり、車椅子に装着しているCDをかけます。いきなり、お気に入りのロックンロールが大音量で流れ始めます。

 

介護職員が「食事の時間なので、食堂に行きましょう」と誘っても「身体の調子が悪いのよ。この動かない足がちょっとね」と言って、足を見せながら、足が痛いと訴えます。「それでは、看護師に見てもらいましょう」と言って介護職員が看護師を呼びに行きます。看護師に言わせると、痛いはずはないんだけれども、本人が痛いと言っている以上、仕方がないわね」と言って、看護師の指示で居室配膳に変更です。前のホームからもらったサマリに書いてある通りです。

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誰も書かなかった老人ホーム

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小嶋 勝利

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老人ホーム リアルな暮らし

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