兄夫婦の高齢父との面会を拒絶する長女
ある日、ホームにZさんの長男と名乗る一組の夫婦が訪ねてきました。このホームにZという老人が入居しているはずなので会わせてほしい、と。自分は長男だと言います。生活相談員が、すぐに長女に連絡をとると、絶対に会わせないでほしいという返事が返ってきました。その日は、押し問答の末、帰ってもらいましたが、長男は「監禁している。これは犯罪だ。訴えてやる」という捨てゼリフを残していきました。
ホームの生活相談員がそのことを長女に伝えると、長女からは「とにかく、兄夫婦には絶対に会わせないでほしい」の一点張りで、しかとした説明はありません。その後、数カ月間にわたり、何度も長男がホームを訪れますが、そのたびに生活相談員と玄関先で口論となり、会わず終いで帰っていきました。
結局、この話の結末はというと、次のとおりでした。Zさんの長女は実の子供でしたが、長男はZさんの兄弟の子供で、養子になっています。そして、この兄弟は子供の頃から仲が悪く、いがみ合っていたそうでした。Zさんはというと、若い頃から定職にはつかず、親から譲り受けた莫大な財産を食いつぶしながら生活をしてきた、これまた絵に描いたような自由人。好き勝手なことをやりながら、金がなくなると不動産を売り、そのお金で生活をしていくというパターンでした。当然、そのような素行に目をつけ、不動産会社、建設会社、証券会社などの営業マンが日参し、土地や株を買わされ、損が出れば持っている不動産を売らされ、という生活だったと言います。
晩年、長女は「このまま放置していては、Zさんの財産が底をつき、死んだ時に相続財産がないなんてことが起こりうる。特に、兄の嫁さんは長年水商売をやっているから、海千山千だ。色気仕掛けでZを騙すなんてことは朝飯前」と考えました。そこで思いついたのが、Zさんを老人ホームに死ぬまで隔離し、兄や他のハイエナから守るという方法だったのです。
ホームの生活相談員は、この事実を知り、Zさんに本意を確認したところ、自宅に帰りたいということだったので、長女と自宅に帰すことを何度も協議しましたが、長女は「最後まで父を守ってほしい、ホームが最後まで父の面倒を見ると約束をした」と言って、契約解除にどうしても同意をしません。行政にも報告し、老人ホームがこのような使い方をされていると訴えても、民民の契約で成立している以上、介入するのは難しいという回答が返ってきました。
長女とのすったもんだの末、生活相談員の粘り強い交渉もあって、Zさんは1年6カ月間のホームでの隔離生活にピリオドを打ち、自宅に帰って行きました。その1年後、Zさんはあっけなく亡くなってしまい、残された財産をめぐり、兄弟間で壮絶な遺産争いが起きていると言います。
小嶋 勝利
株式会社ASFON TRUST NETWORK 常務取締役
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