中古マンションの取引にみる、武蔵小杉の資産価値
近年、台風への注目が高まっているのは、最大風速59メートル以上の「スーパー台風」の日本上陸の回数が、今後増加するのではないか、という見解から。またその危険性が声高らかに伝えられるようになったのは、2019年10月の台風19号で、「住みたい街ランキング」の上位の常連の武蔵小杉や二子玉川で浸水被害に見舞われたことが大きかったのではないでしょうか。
特に近年、タワーマンションが次々と林立するようになり、急速にセレブタウン化した武蔵小杉で、その象徴であるタワーマンションの被害が大きかったことは、センセーショナルに伝えられました。不動産オーナーにとっても、災害リスクが身近であることを改めて知るきっかけになったに違いありません。
その武蔵小杉では、浸水被害により「タワーマンションの資産価値低下」と、多くのメディアで伝えられました。「資産価値の低下は、武蔵小杉全体に及んでいる」という印象をもった人も多いでしょう。果たして、実態はどうなのでしょうか。
国土交通省 「土地情報総合システム」で実際の中古マンションの取引きについてみていくと、武蔵小杉周辺では、2015年以降、四半期平均21件の取引きがありました。特に取引件数が多かったのが、2019年第2四半期(4~6月)の33件。台風19号が襲来した直後の2019年第4四半期には18件、そして新型コロナの感染拡大の懸念が大きくなっていった2020年第1四半期には、12件の取引きがありました(図表2)。
これらから、1平米当たりの単価の推移をみていくと、2015年79.52万円/㎡、2016年86.46万円/㎡、2017年85.61万円/㎡、2018年97.35万円/㎡、2019年84.56万円/㎡と、台風19号が襲来した2019年は平米単価を大きく下げています(図表3)。
しかし四半期ごとにみていくと、台風被害の前の2019年第3四半期(7~9月)は82.91万/㎡円、2019年第4四半期(10~12月)は88.80万円/㎡、2020年第1四半期(1~3月)は87.46/㎡万円と、台風被害の影響は特に見出すことはできません。2019年は第3四半期以前に高価格帯のマンション取引きが集中し、平均単価を引き上げていたものと考えらえます。