人口減少の局面になり、厳しさが増す不動産投資。今後、どこが投資エリアとして有望なのでしょうか。不動産投資には欠かせない要素である「人口」や「不動産取引の現状」などをもとに検討していきます。今回紹介するのは、新宿区「四谷三丁目」。

単身者世帯率が高いが、不動産マーケットは限定的

■「四谷三丁目」の人口構造

国勢調査を中心に、「四谷三丁目」周辺の人口構造をみていきます。

 

「四谷三丁目」のある新宿区の人口は33万人強。世代別では、15〜64歳の労働生産人口が23区平均を5ポイント程度上回り、7割を超える一方、子どもや高齢者の少ない自治体です。また総人口の10人に1人は外国人と、都内でも外国人比率の高いエリアになっています。一方、四谷三丁目エリアは、区平均ほどではないにしろ、23区平均より、15~64歳人口、外国人比率が高く、子どもの少ないエリアです(図表1)

 

出所:平成27年「国勢調査」より
[図表1]「四谷三丁目」周辺の人口動態 出所:平成27年「国勢調査」より

 

世帯の状況をみていくと、新宿区は23区平均と比べて、単身者世帯率が15ポイント近く高く、一方で、単身高齢者世帯が23区平均とほぼ同等ということから、現役世代の単身者層に支持されている自治体であるといえるでしょう。四谷三丁目エリアは区の平均ほどではないにしろ、単身者世帯率は23区平均を10ポイント以上も高く、都内でも現役世代の単身世帯が多いエリアです(図表2)

 

出所:平成27年「国勢調査」より
[図表2]「四谷三丁目」周辺の世帯の状況 出所:平成27年「国勢調査」より

 

単身世帯の支持が厚いという状況から、新宿区は賃貸が優勢なエリアになっています。一方で、四谷三丁目エリアは賃貸が優勢ながらも23区平均を2ポイント程度上回る程度。古くからの住宅街である四谷三丁目付近では、持ち家率も高くなっています(図表3)。5年定着率をみていくと、単身世帯が多い新宿区は23区平均を10ポイント近く下回り、さらに四谷三丁目付近では15ポイント以上も下回ります。都内でも人口の流動性高いエリアだといえるでしょう(図表4)

 

出所:平成27年「国勢調査」より
[図表3]「四谷三丁目」周辺の持ち家率 出所:平成27年「国勢調査」より 
出所:平成27年「国勢調査」より
[図表4]「四谷三丁目」周辺の5年定着率 出所:平成27年「国勢調査」より

 

■不動産マーケットの状況

四谷三丁目エリアの家賃相場をみていきます。前出の通り、徒歩10分でほかの駅にあたるため、徒歩10分圏内に限定して1Kの平均家賃をみていくと、10万円を超え、一般の会社員の適正家賃を超える水準です。また新宿区の平均も大きく上回っています。巨大ターミナル「新宿」に近く、また山手線の内側、3路線が利用できる利便性から、家賃設定の高いエリアとなっています(図表5)

 

出所:公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合 会調べ(9月17日時点)
[図表5]「四谷三丁目」駅周辺の1K平均家賃 出所:公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合
会調べ(9月17日時点)

 

次に中古マンションの取引価格をみていくと、新宿区の平均は東京都の平均を25万円以上上回り、1平米当たり100万円超え。さらに四谷三丁目周辺はさらに20万円ほど高く、1平米当たり121万円。23区の住宅地でも取引価格の高いエリアです(図表6)

 

出所:国土交通省 「土地情報総合システム」より作成
[図表6]「四谷三丁目」周辺の中古マンションの取引金額 出所:国土交通省 「土地情報総合システム」より作成

 

過去5年間の四谷三丁目エリアの中古マンションの取引件数をみていくと、四半期で最大3件の取引きがある一方、ゼロの期もあり、四半期平均1.1件。取引が活発なエリアといえません。取引き価格が高く、マーケットが限定されることがひとつの要因になっていると考えられます。昨今、コロナ禍が不動産取引にも影響を与えていますが、四谷三丁目付近はそもそもの取引き件数が限定的なので、影響の有無を推測するのは難しいといえます(図表7)

 

出所:国土交通省 「土地情報総合システム」より作成
[図表7]「四谷三丁目」周辺における、中古マンションの取引数の推移 出所:国土交通省 「土地情報総合システム」より作成

 

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