新型コロナウイルスの感染拡大によって景気後退が叫ばれ、先行き不透明感が増すなか、日本経済はどうなるか、不動産はどう動くのかに注目が集まっている。本連載は、多くの現場に立ち会ってきた「不動産のプロ」である牧野知弘氏の著書『業界だけが知っている「家・土地」バブル崩壊』(祥伝社新書)より一部を抜粋し、不動産の現状と近未来を明らかにする。

「環境よりも利便性」働き世代は「都心」を目指す

私たちが一般的に不動産と接することができるのは、今や国民の一般的な居住スタイルともなったマンションの価格の点からでしょう。

 

ここ数年で分譲されたマンションの中で売れ行きなどが良くて、市場の話題となる物件のポイントは3つです。

 

「環境よりも利便性」を重視する今の働き世代は圧倒的に「都心」を選択する。(※写真はイメージです/PIXTA)
「環境よりも利便性」を重視する今の働き世代は圧倒的に「都心」を選択する。(※写真はイメージです/PIXTA)

 

まずは「都心」の物件であること。平成初期の頃までは、都心の地価は高く、私たちは住宅を求めて郊外へ郊外へと居住地を拡散していきました。郊外では続々とニュータウンといわれる住宅団地が造成、開発され、また郊外部でも駅周辺に大規模なマンションが多数建設されてきました。

 

しかし現在ではこうした郊外のマンションはまったく人気がありません。あたりまえですが、郊外は自然環境などがよいものの、都心への通勤通学には不適であるからです。

 

逆に湾岸エリアなどを中心に、都心でも比較的リーズナブルな価格のマンションが大量に供給されるようになったために、「環境よりも利便性」を重視する今の働き世代は圧倒的に「都心」を選択するようになったのです。

 

では都心ならばどこでもよいのでしょうか。都心に住むといって思い浮かべるイメージは世代によって違いがあるようです。現在の60歳代以上の世代では、東京でいえば23区内などが該当するようです。たとえば杉並区や練馬区、大田区といった区は、この世代の人たちが住宅を買い求めた時代は、価格があまりにも高く、遠い存在でした。

 

ところが最近ではこれらの区でも、駅からバスに乗っていくような住宅地に建つマンションはあまり人気がないといいます。とりわけ東京は地方と異なり、通勤は電車が基本。つまり住宅選びは「利便性」が圧倒的に重視されるようになっているからです。したがって、都心の中でも人気のあるエリアは行政区とは関係なく、鉄道路線との利便性の良さでマンションが選ばれる傾向になっています。

 

ここで「利便性」という場合に大切なのは、駅からの距離であることはいうまでもありません。しかし、最近の傾向としてもう一つ顕著であるのが、その「駅」に対する評価です。

 

以前は鉄道の「駅近」であればマンションは「買い」といわれました。もちろん毎日の通勤や通学を考えれば「駅近」は絶対的な条件ですので、その法則自体に変わりはありません。

 

しかし、最近では不動産価値を維持向上させるマンション立地のキーワードは、その駅に複数の鉄道路線が入り込んできているかどうかにある、といわれます。いわゆるターミナル駅が人気のポイントとなっているのです。

次ページターミナル駅は街としての新陳代謝が活発
不動産で知る日本のこれから

不動産で知る日本のこれから

牧野 知弘

祥伝社新書

極地的な上昇を示す地域がある一方で、地方の地価は下がり続けている。高倍率で瞬時に売れるマンションがある一方で、金を出さねば売れない物件もある。いったい日本はどうなっているのか。 「不動産のプロ」であり、多くの…

業界だけが知っている「家・土地」バブル崩壊

業界だけが知っている「家・土地」バブル崩壊

牧野 知弘

祥伝社新書

不動産が高騰し続けている。 銀座の地価は1980年代のバブル期を上回り、三大都市圏と「札仙広福」(札幌・仙台・広島・福岡)の上昇が著しい。国内外の投資マネーの流入、外国人富裕層の購入を背景に、超大型ビルや再開発の計画…

不動産激変 コロナが変えた日本社会

不動産激変 コロナが変えた日本社会

牧野 知弘

祥伝社新書

新型コロナウイルスの感染拡大によって不動産の世界は大激変している。「不動産のプロ」であり、長く現場の動向を観察してきた著者は、そう断言する。いったい、何が変わるのか?たとえば、従来社員一人当たり三坪で計算されて…

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録