「タワマンを7000万円で購入した夫婦が…」銀行支店長の本音

新型コロナウイルスの感染拡大によって景気後退が叫ばれ、先行き不透明感が増すなか、日本経済はどうなるか、不動産はどう動くのかに注目が集まっている。本連載は、多くの現場に立ち会ってきた「不動産のプロ」である牧野知弘氏の著書『業界だけが知っている「家・土地」バブル崩壊』(祥伝社新書)より一部を抜粋し、不動産の現状と近未来を明らかにする。

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「すごいですよね。返済は大丈夫なのですか」

日銀が採用を続けるマイナス金利政策とは何でしょうか。

 

これは民間銀行が中央銀行にお金を預ける場合にもらえる金利のうち法定準備預金を超える金額について「マイナス」にするという政策です。民間銀行は、預金者から 預かったお金を融資に振り替えることで利鞘を稼ぐのが本業です。ところが、資金需要が盛り上がらない日本では、民間銀行は貸出先という「運用先」がないためにこれを中央銀行、つまり日銀に一時的に預けてしまっています。

 

アベノミクスを掲げてもいっこうに市中にお金が出回らないと見た政府日銀は、民間銀行から日銀に流れ込んでくるお金に、マイナス金利、つまり利息を取るようにしたのです。

 

パワーカップルが7000万円の住宅ローンでタワマンを購入するという。(※写真はイメージです/PIXTA)
パワーカップルが7000万円の住宅ローンでタワマンを購入するという。(※写真はイメージです/PIXTA)

 

これでは民間銀行は、日銀に余ったカネを持ち込めないということになります。ということは、そのまま持っていたのでは預金者に利息を払うだけになってしまいます。そのお金は「どこか」で運用しなければなりません。その運用先として狙いをつけたのが不動産だったのです。

 

メニューは2つ。住宅ローンとアパートなどの不動産投資ローンです。

 

ある銀行支店長と私の会話です。

 

「いやあ、最近の若い人はすごいですよ。このまえお店に来た30代の夫婦。二人で計7000万円の住宅ローンを組んで湾岸のタワマン買いましたよ」

 

「すごいですよね。返済は大丈夫なのですか」

 

「夫婦とも大企業勤務で、年収は旦那が700万円、奥様が750万円。期間は35年。金利は安いので年間返済額は夫婦あわせても250万円ほど。初めのうちは所得税の還付も来ますからね」

 

「でも35年って途方もなく長いですよね。完済するのは70歳くらい?」

 

「定年退職時にまだ残債がある計画ですが、退職金もあるし、定年延長の可能性もありますからね」

 

「でも余計なお世話だけど、大企業といっても30年持たないというし、夫婦離婚なんかできなくなるよね」

 

「さあ、そのへんは神のみぞ知る、なんてね」

 

銀行にとっては、金利こそ低いものの長期間にわたって借りてくれる住宅ローンはおいしい商品。最近のマンションは価格がどんどん上がっています。彼らにとっては、住宅ローンを貸せさえすれば、この夫婦が将来勤め先の具合が悪くなるだとか、離婚するだとかといったリスクは当面は「関係ない」話なのです。

 

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オラガ総研 株式会社 代表取締役

1959年、アメリカ生まれ。東京大学経済学部卒。ボストンコンサルティンググループを経て、三井不動産に勤務。2006年、J-REIT(不動産投資信託)の日本コマーシャル投資法人を上場。現在は、オラガ総研株式会社代表取締役としてホテルや不動産のアドバイザリーのほか、市場調査や講演活動を展開。主な著書に『空き家問題』『民泊ビジネス』『業界だけが知っている「家・土地」バブル崩壊』など多数。

著者紹介

連載不動産の動きを観察すれば、日本経済がわかる

不動産で知る日本のこれから

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牧野 知弘

祥伝社新書

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業界だけが知っている「家・土地」バブル崩壊

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