消費者の多くは「地球環境活動に貢献したい」という潜在的な価値をもっています。しかし、その思いを表現したり行動に移したりすることは、なかなかできないものです。
日本コカ・コーラが2009年に発売した天然水「い・ろ・は・す」は、「おいしさも環境も大切にする水」をテーマに掲げました。ネーミングの由来は、健康や環境を志向する「ロハス」と、国産であることを想起する「いろは歌」をかけたもの。
またペットボトルの原料を極力抑え、資源保護にひと役買っています。ボトルが薄手になったことで、飲んだ後は絞って捨てられるようになり、ゴミの減量化にもつながりました。
お客様は「い・ろ・は・す」を購入するだけで「地球環境活動に貢献する」という、思いもよらなかった価値を手にすることができたのです。味で差別化するのが難しい「水」に価値をもたせた「い・ろ・は・す」と同じように、「米」に価値をもたせた商品があります。
石川県羽咋(はくい)市の「神子原米」は「ローマ法王献上米」と銘打って、「著名人が食べた」という価値をもたせることに成功しました。
仕掛人は当時羽咋市の臨時職員だった高野誠鮮(じょうせん)さん。町おこしの一環として、神子原米をブランディングしようと考え、「誰もが知っているかたに食べてもらおう」と、天皇陛下への献上を試みます。しかし、献上米制度というものがあり、何年も待たなければならないため断念。
次に、“米の国”アメリカ(米国)の大統領に献上しようと考えますが、打診をしてもいっこうに返事がなく、こちらも断念。それならばと、米の名前に“神の子”がつくことから、ローマ法王に献上しました。これが奏功し、「日本初のローマ法王献上米」として新聞や雑誌など多くのメディアに取り上げられ、人気が沸騰しました。通常は1俵1万3000円程度の米が、4万2000円の値がつくほどになったそうです。
松浦 陽司
株式会社パッケージ松浦 代表取締役社長
※本連載では、世界でただ一人の“パッケージマーケッター”松浦 陽司氏の著書『売上がグングン伸びるパッケージ戦略 赤字商品が大ヒット商品に化ける!!』から一部を抜粋して、売れるパッケージの秘密について解説します。