「時代に即したパッケージ戦略」で業績100億円突破
今回は、「お客様が求めている価値を提供」することで売上を伸ばした商品について、実例を用いて紹介します。
徳島県の「さとの雪」は、味だけでなく、さまざまな角度から「お客様が得られる価値」を創造する会社です。同社は1999年にいち早くお客様の「個食ニーズ」に応え、主力商品の豆腐を2パック、4パックに小分けして発売しました。
「パックから出して、いちいち包丁で切らなくてもいい」
「食器を洗う手間が減る」
「食べ残った分をラップで包んで冷蔵庫に戻すのが面倒だったので助かる」
といった価値をお客様に提供しました。これが大ヒットとなり、さとの雪は売上を大きく伸ばしたそうです。もちろん他社が黙って見ているはずもなく、同じような商品が続々と出てきます。すると同社は、次なる価値の創造に取り組みました。
そうして2010年に発売したのが、「鍋八」です。
冬の鍋料理向けに開発されたこの商品、8つにカットした状態でパッケージに入っています。加えて鍋つゆがよくからむよう、切り口が波型になっているのです。
さらに翌年には、冷奴向けとして一食サイズにカットした「冷六」を発売し、こちらもしょうゆがよくからむような形状になっています。
2つの豆腐に共通するのは、食品でありながらアピールポイントを「味」ではなく、「包丁いらず」「鍋つゆやしょうゆがからむ」という、他社が提供できないところに置いて、それをパッケージで表現している点です。こうして、新しい価値の提供を探求し続ける同社は、ついに100億円の売上を達成するに至ったのです。
同社ではそれ以前、1990年に業界の常識を覆す紙パック入りの豆腐を発売しています。光や酸素を通さない特殊紙容器を使い、独自の製法によって仕上げた豆腐は、「開けたときに出来立ての味が楽しめる」という価値を生み出しました。
この技術をさらに向上させ、1992年に発売したのが「四季とうふ」です。独自の豆乳殺菌法により、保存料を使わずに「賞味期限180日」(要冷蔵)という、豆腐業界ではあり得なかった長期保存を実現したのです。
2018年には厚生労働省によって豆腐の規格基準が改定され、「四季とうふ」のような無菌充填豆腐は常温での流通が可能になりました。今後は「災害備蓄食品」としての価値も提供できる可能性が高まっています。