自分の仕事に誇りをもっている職人さんなど、
「いいものさえ作っていれば売れる」
「食品は味が命、それがすべて」
と思い込んでいるかたもいますが、決してそれだけではありません。むしろ消費者は、別のところに価値を求めている場合が多いのです。土産物なら「おいしさ」よりも「配りやすさ」を求めているかもしれません。実際、最近はほとんどの土産物のお菓子は集合包装ではなく、個包装になっています。
さらに「そこへ行った証拠になる」ことも重要です。パッケージに「○銘菓」や「○に行ってきました」と地名を入れた文字が踊っていたり、観光地の写真をあしらったりと、工夫を凝らしています。
「話題にできるお土産」というのも、お客様が求める価値です。東京都北区の和菓子店「菓匠明美」は、東京で唯一の路面電車である都電荒川線が走る場所にあります。ここで販売している「都電もなか」は、路面電車をかたどったもなかが、同じく路面電車のパッケージに入っています。パッケージは7種類あり、10個入りの箱は車庫に、14個入りの箱はふたが都電の路線図すごろくになっています。土産話に花が咲くこと請け合いですね。
日常食品であれば、「使いやすさ」に価値を求めることもあります。エバラ食品工業の「プチッと鍋」シリーズがその一例です。普通、鍋のだしは「4~5人前」あるいは「200㎖」といった容量で販売されていますが、「プチッと鍋」は1人前ごとにポーションに入れ、使い勝手のよいパッケージになっています。
日清フーズは、袋入りが当たり前だった小麦粉のパッケージを一新し、ボトル入りの「クッキングフラワー」という製品を発売。塩やコショウのように手を汚さずに使えるとあって大ヒット商品となりました。
このように「お客様が求める価値」を徹底的に調べ、考えることで、それまでとは違った価値に気づくことができます。それをパッケージに反映して、お客様に新しい価値を提供するのです。お客様の思いもよらない価値を提案するお客様が「求めている価値」を提することに加え、「思いもよらない価値」を提案するのもポイントです。
代表的な例を2つご紹介します。