「当たり前のひと言」を添えただけでバカ売れ!
一般的な産直市の売り場を想像してみてください。野菜やフルーツはどのようなパッケージに入っているでしょうか。
例えば「おくら」なら、透明の袋に生産者のバーコードと価格のシールが貼ってあるだけの、シンプルなものが多いでしょう。中にはオリジナル印刷を施した袋に入っているものもありますが、だいたいの場合は、白地に緑文字の印刷で「おくら」と書いてあるだけです。
徳島にあるスーパー・キョーエイでは「すきとく市」という産直市を定期的に開催していますが、そこで販売されると圧倒的に売れるおくらがあります。それが「イチハラ農園 朝採りおくら」です
まず目を惹くのがオレンジ色のパッケージです。メインカラーをオレンジにし、産直市の売り場で目立つ工夫をしています。さらに、袋の上のほう、普段は無地で終わらせるところにも、オレンジの柄を入れて、お客様の目に留まる工夫をしています。
そして、色使い以上にお客様の目を惹きつけるのが、「朝採りおくら」というネーミングです。キョーエイ中央店の浅野雄司店長は次のように分析します。
「やはり、お客様はネーミングの“朝採り”というところに惹かれているようです」
スーパーに来店した消費者は、まず商品売り場をざっと見て回ります。そのとき、オレンジ色のパッケージに目を奪われます。手に取ってみると“朝採り”と書いてある。「今朝収穫された新鮮な商品」ということが、お客様に伝わり、購入に至るのです。
「でもね」と浅野店長は続けます。
「産直市ですから、ほかのおくらもその日の朝に採れているんですけどね」
そう、どのおくらも同じように、その日の朝採れたものです。イチハラ農園の「朝採りおくら」と変わらない価値をもっています。ただし、その「朝採り」の価値が伝わったのは、イチハラ農園のおくらだけでした。
このように、まずはパッケージの色を変えることで、お客様に気づかれる存在になる。そして、ネーミングに工夫をすることで、他社と同じような商品であっても、手に取られ、購入される存在になるのです。