売上に伸び悩む「甘酒」のパッケージを変えてみたら…
飲食物をPRする際、おいしさを前面に打ち出したフレーズを使っても効果はありません。消費者にとって、おいしいのは当たり前だからです。
味をアピールするよりも、どんなシチュエーションで、どんなふうに食べたり飲んだりすればよいのか、具体的に提供すると効果的な場合があります。
徳島県吉野川市の「山川町生活改善グループ」は、シーンを絞って伝えることでヒット商品の開発に成功しました。同グループのリーダー中川成子さんはかつて、主力商品である「甘酒」の売上が伸びないことに悩んでいました。
「こんなにおいしいのに、なんで売れないんだろう」と、何度も品質改良を重ねましたが、売上には結びつきません。
悩み抜いた末、パッケージをリニューアルしたい、と私を訪ねてこられました。甘酒は主にどんな人に、どのようなシーンで飲まれているのだろうか。中川さんを通してリサーチしたところ、意外なことがわかりました。
朝飲んでいる人が多かったのです。
調べてみると、甘酒はブドウ糖を多く含み、脳のエネルギー源として、また疲労回復効果に優れていることから、「飲む点滴」とも呼ばれ、朝食代わりに飲むととてもいいことがわかりました。そこで思いきって朝の一点にシーンを絞り、ネーミングを変更しました。
その名も「慌ただしい朝に天然チャージ 朝飲む麹 つぶつぶ麹甘酒」。
また、それまでは500㎖と1ℓの2種類のパッケージしかありませんでしたが、「朝飲む麹」は250㎖の飲み切りサイズとしました。
現在、定期販売は行っていませんが、地域のイベントやマルシェなどに出品しています。そして「飲み切りサイズで便利だから」と一度購入した人が、甘酒の味や効能を知り、500㎖、1ℓの従来品を購入するというリピートにもつながっています。また、スポー
ツイベントなどにも出品しているため、スポーツマンにも愛飲家が広がっています。
このように、「お客様がこの商品で、どんなシーンで、どんなときに、どんな価値を得るのか」を考えると、ヒット商品の開発につながっていきます。