ホームで火種になるような入居者はお断り
かつて、私が勤務していた老人ホームでも「入居者様は民民の契約に基づきサービスを受けているお客様です。サービスを受ける権利があります」とか「今後はAさんとかAちゃんという親しみを込めた呼び方はやめてください。必ずA様と呼んでください」などという指導が頻繁にあったことを思い出します。入居者様はお客様というこの考え方に対し、基本的には誰も反論をする理由はないと思います。
しかし、サービス業という考え方に対し、正しい教育ができなかったこともあり、中途半端のままに「お客様は神様なので反論してはならない」「言われたことは何でもやらなくてはならない」という風潮になっていったことは否定できないと考えています。さらに、「神様の言うことが聞けないのか」という極端な変質をし、結果、職員が疲弊し、退職を加速させていったということだと、理解しています。
私の知人の特別養護老人ホームの管理者からも、冗談とも本気ともつかない次のような話を聞いたことがあります。おかしな利用者、家族を入居させると、職員が疲弊してすぐに辞めてしまう。職員が辞めるとホーム運営に支障が出るので、火種になるような入居者の入居は断わっている。なぜなら、入居希望者はたくさんいるので選ぶことが可能だからだ、と。
真面目な管理者であるこの男が、このようなことを実践しているとはとうてい思えませんが、そのくらいの気持ちになるぐらい現場では、入居者やその家族による無理難題で疲弊しているということも事実なのです。
小嶋 勝利
株式会社ASFON TRUST NETWORK 常務取締役