介護職員にも苦手な業務がある
生活支援介助というと、皆さんはどのような介助を想像するのでしょうか?生活支援介助は多々ありますが、老人ホームで一番大きな生活支援介助は、何と言ってもレクリエーションだと、私は思います。
多くの老人ホームでは、毎日15時ごろから30分程度の時間で、主に「体育」「音楽」「図画工作」の分野の「レクリエーション」を行なっています。ちなみに、体育は体操、音楽はカラオケ、図画工作は絵手紙などになります。さらに、ボランティアにお願いし、俳句や書道、長唄、大正琴など専門知識や技術を要する「レクリエーション」に力を入れているホームも多く、入居者をホーム内の生活で飽きさせない工夫をしています。
意外に思う読者の方も多いと思いますが、多くの介護職員にとって「レクリエーション」は得意な業務ではありません。実は気が重く、憂鬱になる業務の一つなのです。なぜなら、多くの入居者、それも認知症などさまざまな精神的な疾患を抱えている高齢者を相手に「レクリエーション」を先導することは、それなりの技術や経験、知識が必要で、専門的な教育を受けていない者にとっては至難の業だからです。
介護職員の中には、保育士や幼稚園教諭などの有資格者や、介護職員を養成する専門学校を卒業した者も多くいますが、彼らの場合は学校で「場の盛り上げ方」「参加者のイベントへの巻き込み方」などの専門教育を受けているので、上手にストレスなく対応することができます。
しかし、ごく普通の人がいきなり、認知症高齢者を相手に「レクリエーション」を仕切るということは、非常に難しい業務だと理解しなければなりません。
それ以外の生活支援介助として、買い物や病院受診に対する同行、居室内の清掃、薬の管理などが挙げられます。買い物や病院受診の同行も介護職員にとっては、得手不得手が出てくる業務の一つです。
口数の少ない入居者と長時間一緒にいるのが苦手だと感じている介護職員は、意外と多いものです。いくら話しかけても反応が無い入居者や、逆に制止を聞かず傍若無人に振る舞う自分勝手な入居者などに対し、多くの介護職員はなす術がなく、困惑しています。当然、多くの介護職員は、入居者の普通でない振る舞いが病気に起因しているものだと理解はしています。しかし、理解はしていても、介護職員も人の子なので、それらの行為に対し“虚しい”“腹が立つ”といった感情が生まれ、やがて、その人自身のことが苦手になってしまうのです。そして、いつの間にか、そのような入居者には“近づかないようにしよう”という気分になり、結果としてまた一人、苦手な入居者が増えてしまいます。