以下の図表2はマンションのストックのみのデータではありませんが、東京のマンションの5分の1以上が旧耐震基準で造られていることを示しています。
[図表2]東京の建築時期別のマンション戸数(2013年末時点)
政府もただ手をこまねいているわけではなく、改正マンション建替え円滑化法(2014年)のほか、建て替えによる売却が成立したときに、特別控除や長期譲渡所得の軽減税率を設けるなど、さまざまな方法で建て替えを促しています。
しかしストックの問題を適切に解消するには、もう一歩踏み込んで実状を見ていく必要があるのではないでしょうか。
ストックがあるから新しいマンションを建てる必要がない、とはいえません。少子高齢化の時代でも新しい命が生まれてくるように、今こそ立地や設備のニーズを正しく踏まえて価値のあるマンションを建てるべきです。
そのようなマンションを有効な資産として継承し、建物本来の寿命を全うさせることが真のサステイナビリティだといえるでしょう。
そして同時に、現状のストックを有効に活かし市場に流通させるとともに、不要なストックに引導を渡し適切に建て替えるには、ある程度の強制力をもって臨む必要があるかもしれません。
この点については政府も注目しており、重要な施策として数値目標も立てられています。住宅ストックを〝負の遺産〞にしないために、今が正念場なのです。
熊澤 茂樹
生和コーポレーション株式会社 設計部副部長
美術学修士
一級建築士
賃貸不動産経営管理士
愛知県立芸術大学大学院非常勤講師