近年、男女ともに「薄毛」に悩む人が増加傾向にあります。それに伴い「薄毛ビジネス」も発展し、育毛や発毛、増毛を謳うサービスも続々登場しています。しかし、そのようなサービスで実際に薄毛が改善することはありません。ではなぜ、こうした薄毛ビジネスがはびこり、人々は騙されつづけてしまうのでしょうか。※本記事は、青山セレスクリニック(青山院・川口院)理事長の元神賢太氏の著書『専門医が徹底解説! 女性の薄毛解消読本』(2017年刊行)より一部を抜粋・編集したものです。

「あらゆる手を尽くしたが…」裕福だったがゆえの悲劇

【事例】20年間薄毛に悩み続けるZ子さん・70代

 

20年間、いろいろな薄毛対策を試した。けれど苦悩は終わらず…40代前半から抜け毛が気になり始め、50代の更年期前後からは、かなりの薄毛に悩むようになったというZ子さん。最初は分け目、次につむじ、そして頭頂部…。70代になる今までの約20年間、いろいろな薄毛対策を試みてきたそうです。

 

新聞広告で見た育毛シャンプーやローション、エッセンス。美容室で頭皮マッサージを受けたり、美容師がすすめる高額なシャンプーも使ってみたりしました。しかし、まったく効果はなし。次は高額なお金を払って発毛サロンへ。美容室のものよりもさらに高いシャンプーも買い、ヘッドスパも受けました。ところが、それでもまったく髪の毛は蘇らなかったのです。

 

比較的裕福であるため、育毛にはそれなりにお金をかけられたZ子さん。約20年間で、少なく見積もっても300万円は育毛に費やしたといいます。しかし、まったく効果が出ないという事実には大きな精神的ショックを受け、疲れ果てた気持ちになっていました。

 

薄毛については自分自身でも勉強し、薄毛によくないといわれる睡眠不足や栄養不足、ストレスなどを避けるよう努力してきたようです。それでも何の変化もありません。

 

何をやっても髪が生えてこないのならカツラをかぶるしかないと思い、女性用ウィッグも買ってみました。すると当然、薄毛は隠れるものの、頭が蒸れて気持ちが悪く、さらにメンテナンスなども面倒で性に合わなかったとか。そして今もZ子さんは途方に暮れているのです…。

 

このZ子さんのようなケースを見聞きするたび、私はいつもとても残念な気持ちになります。

 

Z子さんが心がけたように、生活習慣を整えることは大切です。しかしながら、薄毛が進行してしまっている状態では、生活習慣に気をつける程度ではとても薄毛を食い止めることはできません。

 

以前の記事『「生えなかった…」被害女性続出、薄毛ビジネスのひどい実態』でも詳しくお話ししましたが、巷に氾濫する育毛シャンプーや発毛ローションと謳われるものに、ほとんど効果は期待できません。発毛サロンと名乗るところも同じです。そこにいくらお金を注ぎ込んでも、まったく髪に効果がないといっていいでしょう。

 

また、カツラは手軽で薄毛隠しに有効なアイテムではありますが、自分の髪が生えるわけではないうえ、高額なお金や面倒な手間がかかります。それが性に合わないとなると、またしてもお金と時間を無駄にしたことになってしまいます。そこで、本来は一日も早く薄毛治療を行っている医療機関を訪ねてほしいのです。それが薄毛を解消する最善の近道です。

姑息な言葉に踊らされ、何百万もの大金を貢ぐ人が続出

薄毛ビジネスの中でも、私が率直に言って全否定したいと考えるのは、「育毛サロン」「発毛サロン」と呼ばれるビジネスです。

 

こうしたサロンでは「育毛、発毛がかないます!」という謳い文句の下、頭皮マッサージやシャンプーなどヘッドスパを施すことがほとんどです。

 

心地のいいインテリア、心が落ち着くようなBGMに包まれて、人に頭皮マッサージやシャンプーをしてもらうのは確かに気持ちがいいものでしょう。それによって癒しやリラクゼーションを得るだけで満足できるというのであれば、サロンへ通うことは決して否定しません。

 

確かに、頭皮マッサージには頭皮の血行を促す作用があり、頭皮の血行がよくなれば、発毛の促進につながるとも考えられます。しかし、いくらマッサージをして血行をよくしても、それは一時的なもの。ほどなく血行は元に戻ってしまうので、発毛に直結するとはとても考えられません。ただし、これも頭皮マッサージをしてもらって気持ちがいいレベルで本人が納得できれば、問題はありません。

 

しかしながら、それが「発毛効果」を謳っており、通う人がそれに期待しているとすると問題です。なぜなら、このようなサロンで頭皮マッサージやヘッドスパを受けても、直接的な発毛はまったく期待できないからです。

 

実際、高額な料金を払ってサロンへ通い続けても、サロン特製という高いシャンプーなどを買って使ってみても、発毛の効果は当然得られません。そこで通うのをやめたいと告げると、今度は強力な引き止めを受けます。

 

このときの殺し文句が、「施術を受けていなかったら、今よりもっと薄くなっていましたよ」「ここまで続けたのにもったいない。もうすぐ効果が出るのに!」「今はヘアサイクル(毛周期)を整えている時期。あと半年で生えます!」。

 

これはじつに巧みに薄毛の人の心を揺さぶる言葉の数々です。そう言われると、これまで高いお金を払い続けてきた身としては心が揺れ、きっぱりとやめることができません。「本当かもしれない。あともう少しで生えるかもしれない」。そう信じたくなり、またサロンに通い続けることになってしまいます。そして、こんな積み重ねによって、何百万円もの大金を注ぎ込んでしまう人も少なくないのです。

なぜ「生える」と謳えるのか?薄毛ビジネスの落とし穴

発毛サロンに関しては、こんな話もあります。10年ほど前でしょうか。男性の薄毛治療すらあまり一般的ではなかった頃、当時から有名だった発毛サロンの営業の方からある依頼を受けました。それは「うちのサロンに来た客を紹介するから、彼らに『フィナステリド』を処方してほしい」というもの。

 

発毛効果を謳ってお客様を集めているサロン自体が、自分たちの施術では発毛はかなわず、薬に頼るしかないということをわかっていたのです。今では、こういった発毛サロンに協力するような医療機関はほとんどありませんが、私のクリニックの患者様には、インターネットで海外から薬を購入するよう指導されたという方もいます。

 

ちなみに、私たち医師による医療機関は、医療法や薬機法、景表法などによって広告規制がかけられているため、「発毛」の効果をCMなどの宣伝で謳うことができません。また、特定の医薬品や具体的な治療方法をテレビで宣伝することもできません。

 

しかし、医療機関でないサロンにはこうした規制がありません。そこで、期待のまったくできない発毛・育毛術を宣伝することができるのです。これも〝薄毛ビジネス〟の落とし穴のひとつです。

 

 

元神 賢太

青山セレスクリニック(青山院・川口院) 理事長

船橋中央クリニック 院長

 

 

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