いい老人ホームだと近所で評判だったのに、入居したら酷い目に遭った――。老人ホーム選びでは口コミがまるで頼りにならないのはなぜか。それは、そのホームに合うか合わないかは人によって全く違うから。複数の施設で介護の仕事をし、現在は日本最大級の老人ホーム紹介センター「みんかい」を運営する著者は、老人ホームのすべてを知る第一人者。その著者が、実は知らない老人ホームの真実を明らかにします。本連載は小嶋勝利著『誰も書かなかった老人ホーム』(祥伝社新書)の抜粋原稿です。

賃金を上げるためのチャンスは存在する

老人ホーム事業者は、介護事業者として認定されるためには、法人格を有しなければなりません。法人格を有するということになれば、当然そこには組織が存在し、そしてほとんどの組織はピラミッド型で運営されているのが普通です。ピラミッド型の組織である以上、上位職に行かなければ当然賃金は上がりません。さらに、現在は高齢者の増加に伴う社会からの要請も手伝って、事業拡大をしている事業者が多く、いわゆる「上」のポストは多くが空いている状態です。

 

しかし、介護業界には、ポストがあるにもかかわらず「上」に行きたくない人と、個人的な事情があって「上」に行くことができない人が多く存在しています。その結果、10年間働いていても賃金は25万円という人が存在してしまっている、ということなのです。

 

つまり、介護業界が、本当に他の業界と比べ極端に賃金が低い業界なのかを判断するためには、諸事情があって「上」のポストに行かない人、行きたくない人を除いた人たちの賃金で考える必要があるのではないでしょうか。

 

もちろん、中には「上」のポストになると仕事が大変になるだけで魅力を感じないので昇格する気になれない、と考える職員もいます。このような考えがあること自体が、多くの賃金を得たいと考えている職員ばかりではないということを示しています。

 

たしかに、金融機関や商社、マスメディアなどと比べれば、介護業界の賃金は総じて低いと思います。しかし、世間で騒がれているほど悲惨な賃金状態ではなく、さらに、賃金を上げる方法論はいくつも存在しているのが現実なのです。中には、銀行や商社では自分と同程度のライバルが多く、上手く昇格や昇給ができなかった人が、あえて、出世だけを考えて介護業界に転職し、見事思惑を達成している人も存在しています。

 

つまり、賃金を上げるためのチャンスは存在している、ということをぜひ頭に入れおいてほしいと思います。

 

小嶋 勝利
株式会社ASFON TRUST NETWORK 常務取締役

誰も書かなかった老人ホーム

誰も書かなかった老人ホーム

小嶋 勝利

祥伝社新書

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