介護職員の賃金は、安いとはいえない?
私がかつて働いていた有料老人ホームの場合、入職後3年間ぐらいは一般介護職として現場の最前線で働くことになります。その後は、介護リーダー、介護主任またはケースワーカーなどの上級職(一定の経験が必要な職位)に昇格していくので、月給は30万円程度に増えていきます。
さらに、その2年後ぐらいには「ホーム長」などの管理職に就任するケースも多く、その場合は、年収ベースで500万円程度は確実に確保することができます。また、人によっては、本社や本部の事務職や営業職への異動もあるので、〇〇課長や〇×次長などになる道も存在しています。
なお、あまり知られていませんが、現存する有料老人ホームや特別養護老人ホームの中には、ホーム長、施設長クラスで年収800万円から1000万円程度を確保することができる事業者も、一定数ですが存在しています。
私は、介護職員の賃金は他の企業と比べた場合でも、世間で言われているほど低くはない、と考えています。なぜなら、多くの介護職員は自らの意思で賃金を上げる道を絶っていると思うからです。むしろ単に「年齢40歳の介護職員、勤続5年で月給18万円。本当に安いでしょ」というような議論があることを、私は問題だと思っています。
多くの介護職員は、「そろそろ介護リーダーや主任職になって、部下の面倒を見ませんか?」とか、「ホーム長になってホーム運営をしてみませんか?」とか、「本社の広報課で欠員が生じたので本社に異動しませんか?」という会社からの打診を自らの意思で断わり、介護職員として働き続けています。
つまり、会社の都合に合わせて異動に応じたり、職責や職位の変更に自らの意思で拒み、一介護職員として働き続けようとしているのです。当然賃金は微々たる年次昇給分しか上がらず、結果、勤続10年でも入社時と比べ1万5千円しか賃金が上がっていない、という状況が出現します。
たとえ10年間勤務していたとしても、年次昇給だけでは生活の質を上げることはできません。
当たり前の話ですが、介護事業者の売上のほとんどは介護報酬です。介護報酬は、国が設計した制度であり、国の管理下で運営されている関係から、ある程度の賃金を支払うことは可能です。大げさな言い方をすれば、公共事業と同じなので、運営を間違えなければ、一定の利益が出るような制度になっているはずです。