新型コロナウイルスの感染拡大によって景気後退が叫ばれ、先行き不透明感が増すなか、日本経済はどうなるか、不動産はどう動くのかに注目が集まっている。本連載は、多くの現場に立ち会ってきた「不動産のプロ」である牧野知弘氏の著書『業界だけが知っている「家・土地」バブル崩壊』(祥伝社新書)より一部を抜粋し、不動産の現状と近未来を明らかにする。

固定資産税、修繕積立金の滞納が社会問題化

価値のなくなった不動産がゴミのように扱われ、結果として多くの家屋が廃墟となり、農地が耕作されずに放置され、森林が適切な間伐や管理がなされなくなることは、国土全体の荒廃へとつながります。

 

価値のなくなった不動産は取引をされず、廃墟はエリア全体のスラム化を誘発し、治安は悪化していきます。そんな土地は誰も関心を向けなくなるために、固定資産税を払わない、マンションの管理費や修繕積立金は滞納する、この「負の連鎖」が日本社会の新たな問題としてクローズアップされてくるのは、もはや時間の問題といえます。

 

マンションの管理費や修繕積立金は滞納する滞納地獄が社会問題化する。
マンションの管理費や修繕積立金は滞納する滞納地獄が社会問題化する。

 

これまで日本における都市計画は、すべて人口が増加することが前提に作られており、開発許可や土地区画整理といった工学的な見地からの都市づくりに重点が置かれてきました。

 

つまりこれまでの都市計画では、建物の適正な配置や街区の整備など都市としての発展を支えるものとして計画が立案され、よもや不動産が無価値化するなどという前提はどこにも存在していなかったのです。

 

空き家の問題は「空家等対策の推進に関する特別措置法」(空き家対策特措法)の下、空き家の撤去を自治体が行なうことにまで踏み込んで問題解決を図ろうとしています。また空き家・空き地バンクを創設して流通を促す取り組みもスタートしました。

 

前出した農地の貸し出しだけでなく、適切な管理が必要な森林に対しては、使用権を設定して防災に資するような動きも出てきました。

 

価値のなくなった不動産をなんとか再生していこうと、国も活発に動き始めているのです。

 

肝心なのはこうした取り組みが単発に終わることなく、それぞれに連携して最終的には「面」としての展開に結びつけることです。

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業界だけが知っている「家・土地」バブル崩壊

業界だけが知っている「家・土地」バブル崩壊

牧野 知弘

祥伝社新書

不動産が高騰し続けている。 銀座の地価は1980年代のバブル期を上回り、三大都市圏と「札仙広福」(札幌・仙台・広島・福岡)の上昇が著しい。国内外の投資マネーの流入、外国人富裕層の購入を背景に、超大型ビルや再開発の計画…

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