持ち家VS賃貸に終止符…賃貸を住み替える暮らし方の新潮流

新型コロナウイルスの感染拡大によって景気後退が叫ばれ、先行き不透明感が増すなか、日本経済はどうなるか、不動産はどう動くのかに注目が集まっている。本連載は、多くの現場に立ち会ってきた「不動産のプロ」である牧野知弘氏の著書『業界だけが知っている「家・土地」バブル崩壊』(祥伝社新書)より一部を抜粋し、不動産の現状と近未来を明らかにする。

大量供給された賃貸アパートは借り手優位

以前は賃貸住宅といえば安普請というのが定番な見方でした。理由は2つ。

 

一つは、賃貸住宅はアパートなどに代表されるように、住宅を購入するまでの「とりあえず」の住宅であり、住んでも2年からせいぜい5年程度住めればよいため、住宅の設備仕様などは二の次という意識が、住宅を供給する側もこれを賃借する側にもありました。

 

理由の2つめは、アパートも賃貸マンションも地主さんの土地活用が中心で、デベロッパーなどの大手企業が参入しておらず、設備仕様もまちまち、管理の仕方もオーナーの考え方や性格によってばらばら、という実態があったからでした。

 

賃貸アパートは借り手優位、テナントによる選別が始まった。
賃貸アパートは借り手優位、テナントによる選別が始まった。

 

賃貸物件というのは、オーナーにとっては当然ですが「なるべく安く建てて、高く貸す、そして管理費用はケチる」ことによって収益が極大化します。借りる側も短期間しか住まないし、「住む」ことに拘る人たちは自分の住宅を買って出ていく。オーナー側も賃貸住戸はなるべく回転してくれたほうがよい。

 

つまり、2年程度でテナントが入れ替わってくれたほうが、そのつど原状回復費を(多めに)請求できるし、新たなテナントからは(しこたま)礼金をとれる。管理費用はなるべくかけずに、「至らぬサービス」をしてテナントが出て行っても、また新しいテナントがやってくるのでかまいやしない。

 

こんな思惑があるために、「顧客ファースト」のような発想は皆無だったのです。

 

こうした無手勝流アパート経営は人口が増加し、都会に大量の若者が継続的に流入し続けている間は成り立ちました。しかし、人口減少、とりわけ若年人口の急激な減少と賃貸アパートなどの供給過剰は、需給のミスマッチを招き、これまでの無手勝流では通用しない時代となりました。

 

また、テナントの居住環境に対する欲求は高まる一方です。なぜならオーナーが子供のころに育った住宅と比べて今の住宅は性能がどんどん上昇し、そうした環境に慣れてきた彼らから見て安普請の賃貸アパートは「住むに堪えない」代物になってしまったからです。しかも大量に供給された賃貸アパートは「借り手優位」。テナントによる選別が始まったのです。

オラガ総研 株式会社 代表取締役

1959年、アメリカ生まれ。東京大学経済学部卒。ボストンコンサルティンググループを経て、三井不動産に勤務。2006年、J-REIT(不動産投資信託)の日本コマーシャル投資法人を上場。現在は、オラガ総研株式会社代表取締役としてホテルや不動産のアドバイザリーのほか、市場調査や講演活動を展開。主な著書に『空き家問題』『民泊ビジネス』『業界だけが知っている「家・土地」バブル崩壊』など多数。

著者紹介

連載不動産の動きを観察すれば、日本経済がわかる

業界だけが知っている「家・土地」バブル崩壊

業界だけが知っている「家・土地」バブル崩壊

牧野 知弘

祥伝社新書

不動産が高騰し続けている。 銀座の地価は1980年代のバブル期を上回り、三大都市圏と「札仙広福」(札幌・仙台・広島・福岡)の上昇が著しい。国内外の投資マネーの流入、外国人富裕層の購入を背景に、超大型ビルや再開発の計画…

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