都心の不動産の高騰、郊外は下がり続けている
今回の不動産バブルで特徴的なのは、都心部の不動産は老朽化した建物の建て替え需要や投資マネー流入の影響で、大幅な上昇を続けている一方で、郊外の住宅地の地価は下がり続けているという事実です。
平成バブル時に「とうとう大分にはバブルはやってこなかった」というお話をしました。今回のバブルは大分どころか、通勤圏であるはずの郊外住宅地にすらやってきてはいないのです。
銀座の地価はバブル時を超えたと話題になりましたが、郊外ニュータウンの中古住宅価格は、バブル時の10分の1以下の価格をつけたまま上昇するどころかさらに下落する兆しさえ見せています。
そして団塊ジュニアたちは、これから親が残していく「財産」であったはずの家の取り扱いに苦慮することになりそうです。都心居住が進むだけでなく、これから本格化する人口減少、とりわけ働き手である生産年齢人口が毎年100万人以上減少していく世の中で、都心まで1時間以上かかる郊外住宅に対するニーズは窄(すぼ)まる一方です。
特に彼らの親世代である団塊世代が後期高齢者になる2024年以降は「多死社会、大量相続時代」が到来するといわれていて、2030年には年間死亡者数は160万人を超えると予測されています。ニーズのなくなった親の残した家を、ジュニアたちは「財産」として受け継ぐことになるのです。
「貸せない」「売れない」「自分も住む予定がない」という三重苦を抱えた不動産は、いわば「負動産」と名前を変え、相続人であるジュニアたちを苦しめることになります。処分も活用もできない家は、維持管理費用や固定資産税、都市計画税などの負担に耐えなければなりませんし、家を取り壊して更地にでもしようものなら、小規模住宅としての固定資産税減免措置などの特典を失うことになります。
これまでは比較的流通性が確保されていたマンションも、今や首都圏近郊でもなかなか買い手が付かない物件が増えてきました。マンションの場合は加えて毎月、管理費、修繕維持積立金が容赦なく請求されてきます。
「こんなはずではなかった」ということになりかねません。
財産であるはずの家という存在は、バブル崩壊とは関係なくその価値を落とし続けますし、バブル崩壊でさらにその下落スピードが加速していくことが予測されるのです。
牧野 知弘
オラガ総研 代表取締役