入居者が普段見せない姿を目にする旅行
このように老人ホームの旅行はかなりの費用と労力がかかります。今は昔と比べ、高齢者介護に理解のあるホテルやレストランも増えましたが、それでも、かなり大変な負担のかかるレクリエーションだと思います。多くの老人ホームでは、半年前ぐらいから準備を進め、家族と入居者双方に対する説明を行ないます。私の経験から申し上げると、金銭的な軽減からではなく、職員の労働力の軽減に協力しようと一緒に旅行に参加してくれる家族もいます。入居者であるご主人は、身体の状態が悪いので参加はできませんでしたが、奥様が手弁当のボランティアで参加してくれた例もありました。
たかが1泊2日の小旅行ですが、旅行が終わった後に残る疲労は、とてもすがすがしいものがあり、参加者全員に達成感があったことが思い出されます。参加した家族の中には、涙を流しながら最後の親孝行ができたと喜んだ人もいました。介護職員側も、大変な苦労をしますが、そんな様子を見るにつけ、自分たちのしたことが正しいことだと実感でき、次の活動につながる体験ができます。「普段はろくに食事をしない入居者さんがホテルの料理は全部食べていた」とか「寝たきりの入居者さんが、朝食のビュッフェでは何度も食べ物を取りに行きたいと希望していた」とか、普段は見ることができない姿を目にすることもできます。
老人ホームで「旅行」をするという話を聞いた場合、そのホームは一生懸命やっているホームだと理解をしてあげてほしいのです。そして、「旅行」ができる老人ホームは、優秀な介護職員がいるホームだと考えてください。
いくつになっても、どのような状態になっても「旅行」は楽しいものであり、素晴らしいものだと思います。可能であれば「旅行」に参加できるような経済能力は保持していたいものです。
小嶋 勝利
株式会社ASFON TRUST NETWORK 常務取締役