依存症患者は体調回復で「治った」と勝手に判断しがち
デイナイトケアでは依存症とどう向き合い、取り組んでいるのか、榎本クリニックの例をご紹介しましょう。依存の種類や個人の症状により違いはありますが、ここでは大枠をご理解いただければと思います。
前提として、薬物依存やアルコール依存など物質を摂取するタイプだと、内臓(胃、腸、肝臓、腎臓など)に障害が出ている場合がありますので、そのときには内科の治療を優先します。
体調があるていど回復してから精神科の治療が始まりますが、本人が「依存症だから専門医に診てもらわなければ」と自分からやってくることはまずありません。逆に体調が回復したことで「病気は治った」と勝手に判断し、また薬物や酒をやってしまうケースがひじょうに多いのです。
そこで、家族や近しい人たちが説得するなどして、クリニックにつれて来てくれるか、あるいは家族だけでも相談にこられるかが、回復できるか否かを大きく左右します。ところが、最近は家族とは疎遠で友人知人もなく、社会から孤立した単身者が増えているのが、問題を深刻にしている一因になっています。
依存症のタイプによって、適切な薬が処方されます。アルコール依存症なら「抗酒薬」というお酒を受けつけなくなる薬(飲むと頭痛や吐き気をもよおす)を、性依存なら瞬間的な興奮を抑える精神安定剤を服用します。ですが、これらは決して「酒を飲みたくなくなる」「異性に関心がなくなる」薬ではありません。依存するこころは継続しており、服用をやめたとたんに同じことを繰り返してしまうのです。
大切なのは薬で症状を抑えながら、薬にたよらずとも依存を断ちきれるような頭と体(そして環境)に変えていくことです。長い時間と努力の積み重ね、そして周囲の支えが必要になります。
その第一歩は、デイナイトケアに通って「規則正しい生活」をすることです。依存症になる人は、劣悪な家庭環境に育ったとか、ストレスから不眠になり睡眠時間がバラバラであるとか、食事が不規則でろくに栄養がとれていないなど、とにかく荒んだ生活になっています。まずは、それを修正していきます。