酒、薬物、性依存…精神科医と患者が「旅行したら」起きたこと

薬物、お酒、ギャンブル…。いつの時代も人々を悩ます「依存症」「こころの病」の問題。医療法人社団榎会理事長である榎本稔氏は書籍『ヒューマンファーストのこころの治療』(幻冬舎MC)にて、デイナイトケア(終日クリニックでリハビリをすること)の重要性を説いています。

依存症患者は体調回復で「治った」と勝手に判断しがち

デイナイトケアでは依存症とどう向き合い、取り組んでいるのか、榎本クリニックの例をご紹介しましょう。依存の種類や個人の症状により違いはありますが、ここでは大枠をご理解いただければと思います。

 

前提として、薬物依存やアルコール依存など物質を摂取するタイプだと、内臓(胃、腸、肝臓、腎臓など)に障害が出ている場合がありますので、そのときには内科の治療を優先します。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

体調があるていど回復してから精神科の治療が始まりますが、本人が「依存症だから専門医に診てもらわなければ」と自分からやってくることはまずありません。逆に体調が回復したことで「病気は治った」と勝手に判断し、また薬物や酒をやってしまうケースがひじょうに多いのです。

 

そこで、家族や近しい人たちが説得するなどして、クリニックにつれて来てくれるか、あるいは家族だけでも相談にこられるかが、回復できるか否かを大きく左右します。ところが、最近は家族とは疎遠で友人知人もなく、社会から孤立した単身者が増えているのが、問題を深刻にしている一因になっています。

 

依存症のタイプによって、適切な薬が処方されます。アルコール依存症なら「抗酒薬」というお酒を受けつけなくなる薬(飲むと頭痛や吐き気をもよおす)を、性依存なら瞬間的な興奮を抑える精神安定剤を服用します。ですが、これらは決して「酒を飲みたくなくなる」「異性に関心がなくなる」薬ではありません。依存するこころは継続しており、服用をやめたとたんに同じことを繰り返してしまうのです。

 

大切なのは薬で症状を抑えながら、薬にたよらずとも依存を断ちきれるような頭と体(そして環境)に変えていくことです。長い時間と努力の積み重ね、そして周囲の支えが必要になります。

 

その第一歩は、デイナイトケアに通って「規則正しい生活」をすることです。依存症になる人は、劣悪な家庭環境に育ったとか、ストレスから不眠になり睡眠時間がバラバラであるとか、食事が不規則でろくに栄養がとれていないなど、とにかく荒んだ生活になっています。まずは、それを修正していきます。

医療法人社団榎会理事長 医学博士 

1935年生まれ。1957年東京大学教養学部理科二類修了。1961年東京医科歯科大学医学部卒業。1975年山梨大学保健管理センター助教授。1988年東京工業大学保健管理センター教授。1992年榎本クリニック院長。1997年より現職。榎本クリニックでは「デイナイトケア治療」を積極的に取り入れ、精神科を受診する人たちが日々の居場所を確保したり仲間作りをしたりできるようにしている。 デイナイトケアには、精神科医、看護師、心理士、ケースワーカーなど様々な職種のスタッフが勤務しており、コミュニケーションスキルのトレーニングや社会復帰のためのサポートを行っている。

著者紹介

連載ヒューマンファーストのこころの治療

ヒューマンファーストのこころの治療

ヒューマンファーストのこころの治療

榎本 稔

幻冬舎MC

こころの病を抱える人が生きるためには、「デイナイトケア」の治療しかない! 従来のこころの病は隔離病棟での治療が一般的であった。 本書で紹介するのは、「デイナイトケア」というこれまでにない、まったく新しい治療法であ…

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