異性ではなく「行為そのもの」に執着している
■性欲のゆがんだ男たち
過度なストレスがかかり精神が耐えきれなくなると、人のこころは無意識のうちにこころの逃げ道を探します。それが「うつ病」の症状になって出てくることもあれば、「依存症」の症状になって出てくることもある。
たとえば、高度成長期には逃げ道が「お酒」に求められることがほとんどでした。「それしかなかった」といったほうが、適当かもしれません。ところがいまは嗜好が多様化したせいで、依存症の対象もさまざまです。
アルコール依存症はいまなお多数を占めますが、覚せい剤や危険ドラッグのまん延も深刻です。体内に取り込む「もの」依存だけでなく、恋愛や虐待(暴力)など「関係」に依存するもの、過食・拒食やギャンブルや仕事など「行為」に依存する症状もあります。
「行為」依存の1つに「性依存」があります。痴漢、盗撮、のぞき、下着泥棒、風俗通い、強姦、サイバーセックス、露出、小児性愛(ロリコン)等々。不思議なことに同じ性依存でも、痴漢をする者はのぞきや強姦には興味を示しません。生身の女性よりも、女性が身につけているモノに異常な興奮を示す者もいます。こうした傾向を見ると、異性に対する興味や関心というよりも、行為そのものへの執着が強いようです。
34歳の元システムエンジニアの男性は、痴漢行為がやめられず、5度も逮捕されました。きっかけは、高校1年生のとき。たまたま混雑した電車内で、手にもっていたノートの針金が女子高生のスカートにひっかかってしまったことだといいます。女性のお尻に手が触れた瞬間、こころの奥底に隠れていた性的嗜好のスイッチが入ってしまいました。
帰宅してネットでアダルトサイトにアクセスすれば「痴漢もの」「女子高生もの」などいくらでも視聴できます。そこで止まっていればよかったのですが、いったん火がついた性的欲求はそう簡単にはしずまりません。妄想はどんどん過激になっていき、ついに自分で体験したいという欲望が抑えきれなくなってしまったのです。