第3ステップ 資金繰りのチェック
続いて、資金繰りのチェックを行います。企業にとって資金(キャッシュ)は、生き物の血液と同じです。資金(血液)が詰まったり、流出が止まらず足りなくなれば、死んでしまいます。
企業が自由に使える資金は一般に、「利益+減価償却費」で計算されます。利益は厳密には営業利益ではなく、税引き後利益で計算すべきですが、経営計画の段階では営業利益ベースでも構いません。
また、減価償却費は税務会計、財務会計における費用の一つですが、実際には資金の支払いを伴わず(設備投資などの際にまとめて支出しているため)、その分だけ手元資金となります。
この「利益+減価償却費」を算出したら、借入金一覧と突き合わせてみます。借入金一覧は、金融機関ごと、約定(ローン契約)ごとに借入金をまとめたものです。ちなみに、金融機関ごとの借入金のシェアの推移からは、金融機関の姿勢を見ることができます。
借入金一覧には、金融機関ごと、約定(ローン契約)ごとに借入額、返済期間、利率、毎月の利息額および毎月の元金返済額が記入されています。ここから、金融機関への年間要返済額を算出し、「利益+減価償却費」と比較します。年間要返済額が「利益+減価償却費」より少ないようであれば問題ありません。
しかし、そうでなければ対策が必要です。対策としては、中小企業では多くの場合、金融機関に「折り返し融資」の依頼をすることになります。「折り返し融資」とは、返済が進んだ分を運転資金として再び借りるものです。その時こそ、経営計画が威力を発揮します。経営計画こそ、金融機関が融資を決断する担保のような機能を果たすのです。
第4ステップ 経営計画の確定
以上のようなステップを経て、利益と資金繰りの見とおしが立てば、それが最終的な経営計画となります。経営計画が定まれば、後は日々の業務遂行と管理を繰り返していくことになります。
中小企業経営者は、経営の「スピード」を上げよ!
経営とは、計画どおりに利益を実現するという〝当たり前〞のことだと述べました。さらにいえばこれからの時代、中小企業の経営者の皆さんは、経営の「スピード」をもっと意識する必要があると思います。
具体的には、短い間隔で業績を締め、経営状況を確認し、必要な手を打つのです。業績を締める回数は、経営判断を行う回数です。もし、1年に1度しか業績を締めてチェックしなければ、経営判断は基本的には年1回です。
それに対して、月次で業績を締めてチェックすれば、年に12回、経営判断を行うことができます。さらに、週次で業績を締めてチェックすれば、年に約50回の経営判断を行うことになります。年に1回しか経営判断をしない企業と、年間50 回の経営判断を繰り返す企業。どちらが業績を着実に伸ばし、あるいは今回の新型コロナショックのような事業環境の激変に柔軟に対応できるかは明らかでしょう。
「何かあったらその時に判断すればいい」という考えもあるかもしれませんが、スポーツのトレーニングと同じで、普段から繰り返し経営判断をしている経営者と、普段はのんびり構えていていざという時に経営判断をする経営者では、判断のレベルに差が付くのは自明でしょう。
なお、これも繰り返しになりますが、未来予測会計は「管理会計」の進化系であり、上場企業に義務付けられている四半期決算や税務上必要な年次決算とは違います。自社の事業内容や経営者の判断に応じて、必要な間隔で、必要な範囲、必要な数値だけを締めればよいのです。
ただし、月次や週次、さらには日次といった高頻度で締め(決算)を行うとなると、システムで処理せざるをえません。経営判断のスピードと回転を重視することが、中小企業の経営におけるIT化の真の目的に他なりません。その意味で、会計ソフトをはじめとする経理システムは、非常に重要です。