(※画像はイメージです/PIXTA)

2025年4月に施行される建築基準法および省エネ法の改正は、一戸建てを検討する人たちに大きな影響を与える見込みです。耐震性能、防火性能、バリアフリー化や省エネ性能のさらなる向上が求められる改正になり、これによって建築コストは大きく上がることが予想されます。今、新築一戸建ての購入を検討している方々は、近年の物価上昇だけではなく法改正によるコストアップにも直面することになります。近年、かつてないほど住宅価格が高くなっていて、わずか5年前の住宅価格の相場がまったく参考にならないほどです。あまりにも住宅価格が高くなりすぎると、購入に恐怖感がつきまとうもの。今後、住宅購入予定者はどのような対策を取るべきでしょうか。この記事では、現状と対策をFPが解説していきます。

 

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建築基準法改正の歴史は「災害の歴史」

建築基準法はこれまで何度も改正されてきました。建築基準法の歴史は災害の歴史ともいえます。戦前の関東大震災を受けて、当時の市街地建築物法(大正8年~昭和25年)が改正されたことが始まりです。これによって日本で初めて耐震基準が定められました。戦後になり、最も大きく法改正されたのは1981年です。1978年に発生し大損害を出した宮城県沖地震が契機でした。

 

宮城県沖地震は、当時の人口50万人以上の都市が初めて経験した都市型地震の典型です。耐震性が著しく低い当時の建物は簡単に倒壊し、全半壊は4,385戸に及ぶ甚大な被害となりました。これを受けて建築基準法が大きく見直され耐震基準が強化されることに。たとえば木造軸組み工法(在来工法)において必要となる壁量の規定が従前の二倍になるなど、かなり大きな改正だったのです。1981年以前の基準を「旧耐震基準」、それ以降を「新耐震基準」と今でも表現しています。

 

さらに1995年の阪神淡路大震災を受けて2000年にも大きな改正がありました。新耐震基準からさらに耐震基準が強化され、「2000年基準」とも呼ばれています。そのおかげもあり、近年の地震災害では新しい耐震基準に適合した住宅は倒壊しにくくなっています。

 

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2025年4月から変わる「建築基準法」と「省エネ法」

2025年4月には建築基準法と省エネ法がさらに改正されます。この背景には2050年カーボンニュートラルを見据えた省エネルギー対策の必要性と、省エネ化に伴う住宅の重量化が挙げられます。

 

政府は2050年に温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させる「カーボンニュートラル」を目指しています。そのためには断熱性能を向上させ、太陽光発電などを利用してエネルギーを生み出し、なおかつ建物が災害に強く長寿命でなければなりません。省エネ性能を上げようとすると、設計はより複雑になり、各種設備が増え建物全体の重量が増えてしまうのです。かつてよりも重量を増した家屋は、耐震性能が伴わなければ災害によって倒壊の恐れがあります。

 

建築基準法と省エネ法の改正によって、新築一戸建てを検討している人に特に影響があるのが次のポイントです。

 

●新築住宅に断熱等級4を義務化

●木造住宅の構造耐力審査が義務化(4号特例の縮小)

 

断熱等級4は2022年3月までは最高等級だったのですが、2025年4月以降は適法の最低基準になります。いかに厳しい水準となるかがわかるでしょう。高い省エネ性能が義務化されることに伴い、これまで大半の戸建て住宅に免除されていた構造耐力審査が義務化されます。

 

これらの改正は消費者にどのような影響を及ぼすのでしょうか。

 

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新築一戸建てを検討する人への具体的な影響

上記の法改正が、新築一戸建てを検討している人に及ぼす影響をまとめてみました。まずはマイナスの影響から解説します。

 

マイナスの影響:設計・施工コストの上昇

法改正によりコストアップが想定されます。具体的にその内訳を見ていきましょう。

 

・構造計算書の作成費用(50万円程度)

・高性能の断熱材の使用

・気密処理工事

・高性能サッシ、玄関ドアに変更

 

どのくらいの追加費用で建築基準法の改正に対応できるのかは、各ハウスメーカーによって異なります。特に断熱性能については最低限の等級4ではなく、その上の基準(等級5、6、7)を取得し、税制優遇(住宅ローン控除の恩恵)を受ける方が得策でしょう。

 

たとえば断熱等級6を要件の一つとする「GX志向住宅」の基準をクリアし、補助金の対象にもなるように建てられた方が良いと考えます。

 

マイナスの影響:建築スケジュールの長期化

木造住宅の構造耐力審査が義務化されることによって、新築一戸建てを建築する場合は建築スケジュールがやや長期化するかもしれません。改正前は延床面積が500m2以下であるなど一定条件以下の建物は、構造計算が義務化されていませんでした。改正後は「新二号建築物(木造二階建て以上の建築物、木造平屋建て、かつ延べ床面積200m2を超える建造物)」と呼ばれる建物の場合、すべての地域で構造計算が義務化されます。

 

改正前から構造計算をすべての建物で行っていたハウスメーカー・工務店もわずかながら存在します。その場合、実務上この部分の法改正は影響しないでしょう。改正前から構造計算を全棟実施していたかどうかは、今後のハウスメーカー選びにおける一つの目安になるといっても過言ではありません。

 

これまで構造計算を実施していなかった企業では、建築スケジュールが長期化する恐れがあります。ゆとりのないスケジュールになってしまうと、現在の賃貸住宅の解約予定日や両親からの資金贈与の日程などもずれ込んでしまい、不利益を被る危険性もあるでしょう。

 

プラスの影響:長期的な省エネ効果とランニングコストの低減

法改正は消費者にとってプラスの影響もあります。

 

省エネ性能の高さは、政府の掲げる2050年カーボンニュートラルに貢献する家となるため、新築戸建て入居には、以下のような様々な支援補助金優遇やエネルギー消費のコスト軽減の恩恵が受けられます。

 

・子育てグリーン住宅支援事業
・戸建住宅ZEH化等支援事業
・住宅ローン減税
・投資型減税(認定住宅等新築等特別税額控除)
・住宅取得等資金贈与の非課税
・エネルギーを上手に使い冷暖房費や電気代の削減

 

さらに、構造計算が実施され安全な住宅であれば、災害にも強く、建物の寿命を延ばすことが可能で、資産面でも以下のようなメリットの享受が受けられます。

 

・地震保険料の割引の可能性
・住み続けられる住まいであり、コスト以上に価値を感じられる
・老後の生活に大きな差となる資産形成



このように省エネ住宅にすることで受けられる様々なメリットは家計収支のゆとりにつながり、生まれたゆとりの部分で金融投資を行うこともできるため、老後の生活に大きな差となります。建築基準法と省エネ法の改正は決してマイナスだけではないのです

 

詳しくは筆者の記事を参考ください(関連記事:連載『AQ Group が送る「住まいづくり」に役に立つ厳選情報』第11回第12回第14回)。

 

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設計・施工業者選びの重要性

住宅の高性能化が求められている現在、設計・施工業者選びはかつてないほど重要になっています。前述したように、断熱性能の技術や構造計算の経験が豊富かどうかで建物への信頼性が異なってきます。

 

今後はさらに求められる断熱性能が上がっていくことがわかっています。すでに将来の基準をクリアできているハウスメーカーもあるため、その点を重視してハウスメーカー選びをしてみてはいかがでしょうか。

 

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