これからの企業に必要なのは、「未来予測会計」です。なぜなら、利益というのは計画的に出すものであり、未来の数字が決定的に重要だからです。管理会計の進化系となる未来予測会計には、中小企業経営をスムーズにする、多数のメリットが秘められています。その具体的な内容と実際の導入のステップを見ていきましょう。※本記事は『5G ACCOUNTING 最速で利益10倍を目指す経営バイブル』(幻冬舎MC)から抜粋・再編集したものです。

これからは企業会計を「未来予測会計」に切り替えよ

新型コロナウイルスの影響を見ても、企業の経営環境は著しく不透明になってきています。これからの企業会計は、税務会計や財務会計のような「過去会計」から管理会計を使った「未来会計」へ、そしてさらに「未来予測会計」へと進化すべきであると私たちは考えています。

 

なぜなら、利益というのは計画的に出すものであり、未来の数字が決定的に重要だからです。これからの時代、綿密なシミュレーションをもとに利益を計画し、日々、計画に沿って事業を遂行し、予測どおりに達成することが経営者の務めです。

 

「計画どおりに行う」というと、何の面白みもない当たり前のことのように思うかもしれませんが、今の時代に「計画どおりに行う」ことがどれほど大変なことか、身に染みて感じている経営者の方も多いはずです。

 

「計画どおりに行う」ということには、二つの要素があります。一つは、計画を立てることです。さまざまな条件を検討して、経営計画を立てるのです。

 

もう一つは、その計画を実行することです。実行してみて、計画を上回ることもあるかもしれませんが、下回ることのほうが多いでしょう。その時、原因を分析してどのような手を打つか。それゆえ、「計画どおりに行う」というプロセスは、とてつもなく難しく、かつ重要なことなのです。

 

この「計画どおりに行う」ための羅針盤となるのが「未来予測会計」なのです。

 

あああ
「計画どおりに行う」羅針盤が「未来予測会計」だ。(※写真はイメージです/PIXTA)

4つのステップからなる「経営計画策定」のプロセス

未来予測会計の前提として、経営計画の策定が不可欠です。そのプロセスは、おおむね次のとおりです。

 

 第1ステップ  過去の実績の把握

 

直前期の貸借対照表と損益計算書は、自社の未来を検討する材料としてはもちろん重要です。企業経営において「過去会計」の役割は以前より低くなっているとはいえ、おろそかにすることはできません。

 

そもそも、過去会計において恣意的な操作(あるいは不作為)などがあると、未来の企業像の検討ができません。

 

例えば、貸借対照表において資産の部(左側)に計上された売掛債権の残高が1億円あったとしても、そのうち7000万円しか回収の見込みが立たない時、実質的には3000万円の損失が発生しています。この損失をどうカバーするかは経営上、喫緊の課題であり、当期以降の資金繰りは当然、大きく変わってきます。

 

表面上はきれいな貸借対照表の裏に、問題が潜んでいることは珍しくありません。過去の正しい実績の把握は、経営計画の大前提です。

 

 第2ステップ  粗利総額の目標設定

 

過去の正しい実績を把握したら、粗利総額の目標を設定します。売上ではなく粗利を目標とする点がポイントです。

 

それにはまず、前期までの固定費の実績を固定費推移表にまとめます。これにより固定費のトレンドを見て、異常数値をチェックします。過去の決算書から異常数値を排除すると、無駄を排除した正常数値による最低限必要な固定費の総額が分かります。最低限必要な固定費の総額が分かったら、粗利総額の検討に移ります。

 

粗利総額は売上高総利益のことで、売上総額と平均粗利率から算出されますが、経営計画の策定においては、より細かく事業単位、商品単位の売上と粗利率に分解して検討することが不可欠です。

 

企業が手掛ける事業や生産・販売される商品の組み合わせのことを「プロダクトミックス」あるいは「商品ミックス」といいます。自社の「プロダクトミックス」あるいは「商品ミックス」を踏まえて、市場環境や競合他社の動向を考慮しながら、売上はどれくらい見込めるか、粗利率はどの程度を確保できるか、経営者と部門責任者が集まり、何度もシミュレーションしながら数値を見極めていきます。

 

その結果、想定される粗利総額が固定費を超えれば問題ありません。逆に、粗利総額が固定費より少ないようであれば、やり直しです。商品構成を変更するか、粗利率を変更するか、あるいは固定費をさらに削減するか、選択しなければなりません。

 

商品構成や粗利率の変更は販売戦略の見直しであり、固定費の削減は時として人的なリストラを含みます。これを、粗利総額が固定費を超えるまで繰り返すのです。こうして設定された粗利総額の目標が、経営計画の中心となります。

次ページ第3ステップは「資金繰りのチェック」

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