長らく続く不況下で、経営難に陥っている中小企業は数多くあります。しかしプロの目から見ると、その原因はビジネスそれ自体ではなく、税務や会計の問題であることも少なくないのです。目の前のビジネスに必死になり、会計部門の課題解決を後回しにしていた会社が、適切な会計処理の実施だけであっさり復活・躍進できた事例を紹介します。※本記事は『5G ACCOUNTING 最速で利益10倍を目指す経営バイブル』(幻冬舎MC)から抜粋・再編集したものです。

税引き後の利益額やCFが、決算時まで分からない!?

クラウド型AI会計システムを使いこなし、「未来予測会計」に切り替えることで中小企業の経営がどのように変わるのか。ここでは、筆者が実際にサポートし、劇的な経営改善を成し遂げた事例を紹介します。

 

業種や企業規模などは関係なく、「経営の見える化」によって経営改善の打ち手が分かり、その打ち手を確実に実行していくことで自社が進むべき道が定まってきます。経営者としては将来への不安が次第に消え、経営に対する自信がみなぎってくるのです。

 

【CASE1】マーケティング会社
月次決算会議で経営改善が劇的に進むように!

 

 ★課 題★ 

 

企業向けのマーケティングサービスを手掛けるA社は、過去の設備投資に対する多額の借入金を抱えており、それを返済しながら運転資金の借入を繰り返していました。年間2000万円の返済額をカバーするためには利益のハードルが高く、過去の決算において黒字の際も200万円ほどの利益が出るにとどまっていました。

 

ところが、顧問を依頼している税理士事務所は、試算表が完成しても内容についての説明はなく、相談相手になる存在ではありませんでした。特に問題だったのは、毎月の試算表を消費税込みで処理しており、年度末にまとめて税別処理をしていたため、決算時に大きな租税公課(消費税)が発生していたことです。また、減価償却費についても年度末にまとめて計上しており、税引き後の利益額やキャッシュフローが決算時まで分からないということが、毎年繰り返されていました。

 

これは、最終的な税務申告の時に決算が確定していればよいという税理士事務所の考え方(税務会計至上主義)によるものであり、管理会計マインドを持ち合わせていないことが分かります。社長によれば、「業種的にアルバイトの調査員を多く採用していて、毎年の最低賃金引き上げがボディーブローのように効いています。

 

このままの決算が続けば、近い将来、借入金の返済について金融機関にリスケを要請せざるを得ないところまで追い込まれていました」とのことです。

 

あああ
このままでは、金融機関に借入金返済のリスケ要請せざるを得ないところまで…(※写真はイメージです/PIXTA)

 

 ★対 策★ 


社長は、金融機関から黒字化支援に強い会計事務所をセカンドオピニオン先として紹介され、そのアドバイスをもとに以前からの税理士事務所には毎月の試算表作成において、消費税抜きでの処理と減価償却費の按分計上を依頼しました。また、クラウド型AI会計システムを導入し、会社の経営数値を役員がタブレットやスマートフォンからリアルタイムで確認できるインフラを整備しました。

 

こうして毎月、社長と社長の親族の役員、金融機関担当者と会計事務所が顔を合わせる月次決算報告を定期的に実施。会社の〝今〞の状況を全員が意識しながら、どのコストを削減すれば粗利やキャッシュフローが改善されるか、繰り返しシミュレーションし、実行した結果をまたフィードバックするPDCAサイクルを回していきました。

 

「特に注目したのは、前期の赤字の要因となっていた固定費です。今期の予算作成にあたっては、4億円の売上を軸に、経常利益2000万円を実現するための固定費総額をセカンドオピニオンの会計事務所と話し合い、これなら自分で実現できると思える計画に落とし込むようにしました。また変動費については、売上を年間4億円に設定した場合、変動費率が過去の決算数値よりも増加することが分かり、変動費予算として31%以下にする設定としました」

 

実直な社長は、目標値(固定費額・変動費率)の進捗状況をチェックするのが日課になったといいます。

 

「気になった数字はクラウド型AI会計システムでどこにいても確認できるため、出張中でも自宅にいても会社の今の状況を間近に感じることができるようになったのは新鮮な驚きでしたね」

 

これがクラウドの強みであり、IT化の大きなメリットです。

 

 ★結 果★ 

 

半年が経過した時、年間2000万円の利益目標を達成することができました。A社ではこれまで、せいぜい年間200万円ほどの利益しか出したことがなかったのですが、わずか半年でその10倍の利益を実現できたのです。

 

これは「なんとなくそうなった」ということではなく、固定費や変動費率のコスト管理に愚直に取り組み、計画を上回るレベルで実行できた結果に他なりません。毎月の固定費を抑え、仕入や外注費などの変動費率も一定以下にコントロールできれば、売上の伸びに比例して利益がどんどん残るようになります。

 

社長としては、ここまでの利益が出ることをなかなか信じられない場面もあったそうです。しかし、毎月、借入金の返済を行いながら、会社の通帳残高が増加していく事実を目の当たりにするうち、それが当たり前となりました。年間2000万円以上の利益が当たり前のマインド(思考)になると、今度はこの利益を守り、さらに増やそうと考え始めます。

 

「数字が分からない」という経営者は少なくありませんが、まずコスト(経費)の数字と日々、真剣に向き合うことが大切です。すると、売上と利益についても正面から考える姿勢が出てきます。日々、変動費と固定費をチェックすることで、「これくらいの売上ならこれくらい利益が出る」と見とおしが付くようになります。すると、経営者の心に余裕が出てくるのです。それが、さらなる売上と利益の向上に向けたアイデアや行動を生み、企業の成長につながっていくのです。

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