多くの中小企業にとって会計とは、前期の実績から来期の経営計画を立てる「過去会計」としての役割が精一杯でした。しかし、AI(人口知能)搭載のクラウド型会計システムなら、経営者が描く未来へと誘導する「未来予測会計」が実現できます。一体どのようなものなのか、どのような可能性を秘めているものなのか、じっくり紐解いていきましょう。※本記事は『5G ACCOUNTING 最速で利益10倍を目指す経営バイブル』(幻冬舎MC)から抜粋・再編集したものです。

迅速で柔軟な経営が求められる中小企業

今、世の中では「AI」(人工知能)や「5G」(第5世代移動通信システム)、「IoT」(モノのインターネット)など新しいIT技術が注目されています。これらの普及によって私たちの生活は大きく変わるといわれています。

 

AI、5G、IoTで、私たちの暮らしは大きく変わるだろう。
AI、5G、IoTで、私たちの暮らしは大きく変わるだろう。

 

変化するのは私たちの生活だけではありません。ビジネスの世界も大きく変わります。新しいIT技術を活用し、社会の変化を先取りし、顧客に新しい価値を提供し続けられる企業でなければ、生き残ってはいけないでしょう。

 

特に中小企業には、より迅速で柔軟な経営が求められます。中小企業の強みとしてはよく、組織が身軽で小回りがきくこと、意思決定がすばやいこと、ニッチな市場で専門性を発揮できること、などが挙げられます。

 

大企業と比べて人、モノ、金(かね)といった経営資源は限られますが、今のような激動の時代には、中小企業ならではのこうした強みが大きなアドバンテージにつながります。

 

ただし、それには経営者の意識改革と経営スタイルの見直しが不可欠です。そのためのカギを握るのが、会社の未来を読み解く「5G ACCOUNTING」(第5世代会計)であると筆者は考えています。

 

これまで、多くの中小企業が行ってきた会計は、税務申告や金融機関へ提出する資料作りのための集計であり、せいぜい前期の実績から来期の経営計画を立てるための「過去会計」でした。

 

それに対し「5G ACCOUNTING」とは、経営者が描く会社の未来像に向けて、いわば自動運転で進むための会計、すなわち「未来予測会計」です。

 

「未来予測会計」と聞くと、難しい会計知識が必要なのではないかと思われるかもしれませんが、本連載で紹介する「5G ACCOUNTING」に難しい専門知識は不要です。

 

AI(人口知能)を搭載したクラウド型会計システムを活用することで、自社の経営状態をリアルタイムに把握し、どのような手を打てばよいかが簡単に分かり、スピーディーに会社を成長に導くことができるのです。

 

これまでの「過去会計」をどのように「5G ACCOUNTING」へと切り替えていくのか。本連載のなかで、ひと足先に「5G ACCOUNTING」を実践し、成功している中小企業の事例なども交えて解説していきましょう。

 

AI、5G、IoT…急速に進展する技術革新

2020年は将来、新型コロナウイルスの世界的な蔓延をきっかけに史上最大級の不況が始まった年として、多くの人の記憶に残るでしょう。東京オリンピック・パラリンピックはとりあえず1年延期となり、日本全国に初めて「緊急事態宣言」が出されました。

 

外出自粛により多くの企業では在宅勤務(テレワーク)やテレビ会議が当たり前になり、インターネットを使った遠隔教育や遠隔医療が一気に広まっています。中小企業の経営も当然、変わらざるを得ません。今までの延長線上の発想ややり方では、とても対応できません。

 

重要なのは、IT(Information Technology)やICT(Information and Communication Technology)を経営に取り込むことです。ITやICTの進化の最先端に位置するAI(人工知能)、5G(第5世代移動通信)、IoT(モノのインターネット)の三つがとりわけ注目されます。

 

こうした新しいIT・ICT技術を活用し、これまで大企業に比べて遅れていた生産性の大幅な改善が、中小企業には求められているのです。これから、社会もビジネスも大きく変わります。かつての姿に戻ることはあり得ません。このメガトレンドに対応できなければ、中小企業の明日はないのです。

「AI」によってなくなる仕事、消える業種とは

AIは過去にも何回かAIブームがありましたが、現在のブームは間違いなく社会を変えるインパクトを秘めています。

 

その一例が、AIによって一部の仕事や職業が消えるのではないかという議論です。

 

5年ほど前、野村総合研究所が英国オックスフォード大学の研究者と共同で、日本国内にある601種類の職業について、人工知能やロボットで代替される確率を試算しました。

 

その結果、10〜20年後には日本の労働人口の約半分にあたる職業が、技術的には人工知能やロボットで代替できる可能性が高いことが分かったのです。人工知能やロボットで代替できる可能性が高いという点で分かりやすいのは、特別の知識・スキルが求められないような職業です。それだけに限りません。

 

AIが強みを発揮するのは、大量のデータ処理とともに、データを照合して共通点を見つけ出したり、データから統計的に判断を下したりすることです。AIは「論理」と「確率」と「統計処理」を得意としており、意外にこれまで知的で難しそうと考えられていた職業でも影響を受けかねません。一定の知識・スキルが必要であっても、環境の変化に対応することなく惰性で動いているだけのような職業なのです。

 

野村総合研究所の試算では、人工知能等で代替できる可能性が高い職業の中に、「会計監査係員」「貸付係事務員」「銀行窓口係」「経理事務員」などが挙げられていました。私たちの経験から付け加えれば、帳簿付けと税務申告しかできない税理士なども入るでしょう。今回の新型コロナウイルスへの対応でもそうです。

 

雇用調整助成金の申請にすぐ取り掛からなかった社会保険労務士、緊急時においてもこれまでと変わらない融資審査を行っていた金融機関の融資係、資金繰りが切迫する中小企業に対し確定申告を優先しようとした会計事務所なども消える業種に該当することは明らかです。

 

逆に、AIの影響をあまり受けないのは、論理的に説明しにくい仕事や統計処理では扱えない業務です。突拍子もないアイデアを生み出したり、複雑で不確実な条件を踏まえながら思い切った決断をすることなどを、AIは苦手としています。企業経営はまさにその典型です。

中小企業の生産性を一気にアップする「5G」の可能性

「5G」は、第5世代移動通信システムの略です。2020年3月から、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの大手通信会社が一斉に5Gのサービスを開始しました。

 

移動通信システムは1980年代、携帯電話として登場しました。これが第1世代の移動通信システム(1G)です。その後、移動通信システムが2G(第2世代)、3G(第3世代)へと進むにつれ、端末の小型軽量化だけでなく、データ通信ができるようになり、メールやインターネットの利用が普及しました。

 

今ではスマートフォンで動画を観るのも当たり前になりましたが、それを支えているのが無線データ通信網の進化であり、その最新バージョンが「5G」です。

 

スマートフォンでメールを送ったり、SNSや音楽、動画を楽しんだりするには、従来の4Gでもそれほど大きな問題はありません。しかし、次に触れるIoT(モノのインターネット)の時代になると、道路を走る自動車から工場の製造ライン、街中のカメラやセンサー、家庭内のエアコンや冷蔵庫まで、さまざまな機器・装置がインターネットとつながり、やり取りされるデータ量が爆発的に増えます。

 

そこで必要になるのが5Gです。5Gでは、通信速度が4Gより数十倍から100倍ほど速くなります。4Kや8Kといった高精細な映像もスムーズに送受信でき、2時間の映画がわずか3秒でダウンロードできるそうです。

 

5Gでは通信速度が速くなるだけでなく、多数の端末と同時に接続でき、データ転送の遅れがほとんどなくなるといったメリットもあります。ただし、5Gは従来とは周波数帯が異なり、電波が届く範囲が狭いとされます。基地局は都市部から整備される予定ですが、「ローカル5G」といって駅や空港、工場や建設現場、物流倉庫や店舗など特定エリア内での活用が先行しそうです。

 

また、5Gはあくまで通信技術です。超高速、多数接続、低遅延といったメリットをどのように活用するかはこれからです。5Gサービスを提供する携帯各社も、用途の開拓に力を入れています。中小企業でも、この5Gを上手に活用すれば一気に生産性を上げる可能性が見えてくるのではないでしょうか。

「IoT」でいよいよ本格化する、ビッグデータの時代

IoT(Internet of Things:モノのインターネット)とは、スマートフォンやコンピュータなどの情報通信機器だけでなく、世の中に存在するさまざまなモノに通信機能を持たせ、インターネットに接続したり、相互通信したりすることを指します。

 

具体的には、多くの自動車の位置情報をリアルタイムで集めて渋滞の発生状況を配信したり、検針員の代わりに電力メーターから直接、電力使用量を確認したり、機器に内蔵したセンサーを通して稼働状況や故障箇所、部品の交換時期をリアルタイムに把握したりすることが可能になります。大手調査会社のIHSテクノロジーズによれば、IoTに接続される機器は2020年に世界で約530億個になるとされます。

 

一方、インターネットにつながっていることからIoTはサイバー攻撃の対象となるリスクがあり、また個人のプライバシーをどう保護するかも課題となっています。

 

そうした課題があるとしても、IoTは5GやAIなどと密接に関連し、私たちの暮らしや産業を大きく変えていくことになるでしょう。

 

 

 

 

岡本 辰徳

株式会社YKプランニング 代表取締役

 

鈴木 克欣

税理士法人SHIP 代表社員税理士

株式会社SHIP 代表取締役

 

5G ACCOUNTING 最速で利益10倍を目指す経営バイブル

5G ACCOUNTING 最速で利益10倍を目指す経営バイブル

岡本 辰徳,鈴木 克欣

幻冬舎メディアコンサルティング

世の中は「AI」(人工知能)や「5G」(第5世代移動通信システム)、「IoT」(モノのインターネット)など新しいIT技術が注目されています。 これらの普及によってビジネスの世界も大きく変わります。 新しいIT技術を活用…

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