本当の「空き家大国」は東京都という現実
1つ目は地方都市のケースが多いだろう。人口減少が進み、公共インフラも不十分な状況になると、そこに住む理由がなくなってしまうからだ。
2つ目は、大都市圏でも起こり得るケースで、両親との同居という選択をしなかった場合、子供たちはそれぞれ別の住まいを構えるため、両親が亡くなった後、空き家になった実家の処理に困り、放置してしまう。場所によっては第三者に貸すという方法もあるが、リフォームなどをしないと貸せる状態にはならず、投資コストを考えると二の足を踏むケースだ。もちろん、売却する道もあるが、生まれ育った実家を売却することに抵抗があったり、実際売りに出しても買い手が現れなかったり、という状況にあるようだ。
3つ目は、相続でもめて共有になってしまって売却ができなかったり、借地で地主と折り合いが つかず、そのままになっていたりというケースである。
活用も売却もなかなか進まない空き家は、所有者にとってはいわばお荷物。だが、家主業を始めようという人にとっては、この戸建ての空き家も宝物となる可能性がある。「戸建て賃貸」として貸し出すことを考えれば、工夫次第で「お金のなる木」に変えることができるからだ。
実際、築年数の古い郊外の戸建てを購入し、家主業だけで余裕のある生活ができる人は、私の身近だけでも少なからずいる。彼らはこんな場所に賃貸需要があるのか、と思うような場所の戸建てを購入し、入居者を募集して契約し家賃収入を得ている。
詳細は後述するが、例えば、首都圏であれば千葉県の外房エリアで、都心まで出るには電車で1時間半ほどかかるような場所。だが、そんなエリアでも、趣味がサーフィンという 20 代、 30 代の人が入居者として見込めるという。当然、家賃は都心近郊よりも安いが、取得額も安いので収益性が高くなるケースは割とある。
空き家すべてを宝物に変えることができるわけではないが、賃貸需要があるエリアにも空き家はあるようだ。
ここで意外な調査結果を紹介しよう。先に紹介した「平成30年住宅・土地統計調査」に空き家率の高い都道府県ランキングと、低い都道府県ランキングが紹介されている。空き家率が最も高いのは山梨県で21・3%、2位が和歌山県で3位が長野県。空き家率が最も低いのは、埼玉県と沖縄県が同率で10・2%、3位が東京だった。
だが、この空き家率に惑わされてはいけない。 都道府県別空き家数を見てほしい。全国で最も空き家数が多いのは、なんと東京だ。空き家率が最も高い山梨が9万戸なのに対し、東京は80万戸もある。本当の「空き家大国」は東京なのだ。東京に空き家という名の宝物が眠っているといえるだろう。
東京に限らず、住宅総数の多い神奈川県には48万戸、千葉県38万戸、埼玉県34万戸、大阪府70万戸、愛知県39万戸と、多くの空き家がある。空き家には大いにチャンスがあるといえるだろう。