10日、東京都の新型コロナウイルス感染者数が243人と過去最多の数値であることが判明した。第2波への不安広まるなか、小池百合子都知事は「さらなる警戒が必要な段階」と懸念の色を示している。感染者の実数周知のため、肝となるのはもちろんPCR検査だが、日本の検査数は各国と比べ異常なほど少ないままだ。医療ガバナンス研究所の上昌広氏が指摘する、日本の大いなる欺瞞とは。※「医師×お金」の総特集。GGO For Doctorはコチラ

知られざる事実「内閣はPCR検査数を増加させたい」

実は、安倍総理は繰り返し「PCR検査を増やせ」と言っている。それにもかかわらず、厚労省の部局と関係者が平然と無視している。知人の自民党の元大臣経験者は「新型コロナウイルス対策をみていて、どうして総理の言うことを無視するのか、それが不思議だ」という。

 

だからこそ、西村康稔・経済再生担当大臣が、専門家会議を廃して新しい枠組を作ろうとしたが、根回しが十分でなかったことを批判され頓挫した。このあたりの背景をメディアは報じていない。

 

PCR問題は国家のガバナンスの点から考えれば問題だ。総理の指示も効かないテクノクラート集団が存在すること意味するからだ。総理の指示に従わないのだから、国民の意向などどうでもいい。悪名高い「37.5度、4日間ルール」を押し通したのも、このような背景があるからだろう。この状況は若手将校が暴走した2.26事件を想起させる。

 

ところが、そのおかしさを誰も批判せず、彼らの意見をそのまま流すメディアが多い。「感染症対策予算も保健所も減らしておいて『韓国の体制が良い』などと言うな」という岡部氏のインタビュー(ダイヤモンド・オンライン、6月22日)など、その典型だ。

 

なぜ、世界の先進国のなかで日本だけPCR検査の数が少ないのか、それは妥当なのか、国民の視点に立って議論すべきだが、提供者サイドの都合だけが強調される。

 

PCR検査には限界がある。軽症例や感染早期の患者は偽陰性を呈することがある。それでも、感染者を見つけ、治療・隔離するには、PCR検査を増やすしかない。そして、感染していない人には社会活動を続けてもらわなければ、社会は維持できない。世界はPCR検査の限界を認識しながらも、検査数を増やし、新型コロナウイルスとの共存を目指している。だからこそ、北京は毎日100万人以上の検査を実施したのだ。このような原理原則を踏み外し、日本独自のモデルを提唱しても、事態は改善しない。

 

閉鎖的な集団は必ず衰退する。日本の感染症対策が停滞していることは、その研究開発力を見れば一目瞭然だ。

 

[図表2]に世界各国の人口当たりの新型コロナウイルスに関する論文数を示す。日本で新型コロナウイルスの研究が進まないのは、データの開示・公開が遅れているからだ。厚労省・感染研・一部の学者が独占している。

 

出典:PubMed(米国国立医学図書館)収載、国際連合の人口推計(2020年) 2020年6月3日 山下えりか(医療ガバナンス研究所)
[図表2]人口10万人あたりのCOVID-19関係論文数(国・地域別)2020年6月3日現在 出典:PubMed(米国国立医学図書館)収載、国際連合の人口推計(2020年)
2020年6月3日作成 山下えりか(医療ガバナンス研究所)

 

クラスター班の一員である堀口逸子・東京理科大学教授は、4月24日の自身のツイッターで「計算式だせだせ、て、みなさんいうけど、査読中で、通ったら出します。て答えていたよ。西浦先生。掲載されたら出せます、て、当たり前すぎる回答でした。科学だから」と述べている。

 

西浦教授とは「8割おじさん」として知られる西浦博・北海道大学教授だ。彼がプログラムコードとデータをGitHubで公開したのは5月12日だ。新型コロナウイルス対策において、西浦氏の論文業績と情報開示のどれを優先すべきか議論の余地はない。

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